ジゴキシンと相互作用する薬物 101回薬剤師国家試験問274-275

101回薬剤師国家試験 問274−275
54歳女性。2年前に高血圧及びうっ血性心不全と診断され、以下の処方による薬物治療を受け、状態は安定していた。昨日、食欲不振と吐き気を訴え受診し、緊急入院となった。ジゴキシンの血中濃度を測定したところ、2.2ng/mL であった。持参薬確認のため薬剤師が面談したところ、鼻水が出て喉が痛いなど風邪気味の症状のため1週間前に近医を受診し、そこで処方された薬を服用しているとのことであった。

 

101回薬剤師国家試験問274-275 ジゴキシンとクラリスロマイシンの相互作用

 

問274(実務)
患者がこの1週間に服用していた薬物として最も可能性の高いのはどれか。
1つ選びなさい。
1 アセトアミノフェン
2 クラリスロマイシン
3 セフジニル
4 リファンピシン
5 レボフロキサシン水和物

 

問275(薬剤)
この患者で起きている相互作用として可能性が高いのはどれか。2つ選びなさい。
1 CYP3A4によるリシノプリルの代謝が抑制された。
2 CYP3A4によるジゴキシンの代謝が促進された。
3 P-糖タンパク質によるリシノプリルの排泄が促進された。
4 P-糖タンパク質によるジゴキシンの排泄が抑制された。
5 腸内細菌叢への影響によりジゴキシンの不活化が抑制された。

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101回薬剤師国家試験 問274−275 解答解説

 

101回薬剤師国家試験問274-275 ジゴキシンとクラリスロマイシンの相互作用

 

問274について、
患者がこの1週間に服用していた薬物として最も可能性の高いのは、
選択肢2のクラリスロマイシンである。

 

問275について、
この患者で起きている相互作用として可能性が高いのは、
選択肢4の「P-糖タンパク質によるジゴキシンの排泄が抑制された」と、
選択肢5の「腸内細菌叢への影響によりジゴキシンの不活化が抑制された」である。

 

患者は食欲不振と吐き気を訴えており、
また、ジゴキシンの有効血中濃度は0.5〜2.0 ng/mLであるのに対し、
患者のジゴキシンの血中濃度は2.2 ng/mLであることから、
患者はジギタリス中毒であると考えられる。

 

101回薬剤師国家試験問274-275 ジゴキシンとクラリスロマイシンの相互作用

 

 

問274の選択肢の薬物のうち、
ジゴキシンとの相互作用が疑われるのはクラリスロマイシンである。
クラリスロマイシンは、14員環マクロライド系抗生物質であり、
CYP阻害作用とP-糖タンパク質阻害作用を示す。

 

101回薬剤師国家試験問274-275 ジゴキシンとクラリスロマイシンの相互作用

 

ジゴキシンは、主に未変化体として、
腎臓で糸球体ろ過と尿細管分泌により尿中排泄されて消失する。
ジゴキシンの近位尿細管からの分泌には、
P-糖タンパク質が関与すると考えられている。
よって、ジゴキシンとクラリスロマイシンを併用すると、
クラリスロマイシンのP-糖タンパク質阻害作用により、
ジゴキシンの尿中排泄が抑制され、ジゴキシンの血中濃度は上昇する。

 

経口投与されたジゴキシンは、腸内細菌によって代謝され、不活化する。
よって、ジゴキシンとクラリスロマイシンを併用すると、
クラリスロマイシンにより腸内細菌の増殖が抑制され、
ジゴキシンの腸内細菌による不活化が抑制されることにより、
ジゴキシンの血中濃度は上昇する。

 

 

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