薬物の腎排泄に関する記述 92回薬剤師国家試験問155
92回薬剤師国家試験 問155
薬物の腎排泄に関する記述について、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
1 糸球体ろ過は加圧ろ過であり、毛細血管内圧がボーマン嚢内圧よりも高いために起こる。
2 糸球体の基底膜は陰性に荷電しているため、アニオン性薬物はカチオン性薬物よりろ過されにくい。
3 サリチル酸の尿細管からの再吸収は、尿がアルカリ性になると増加し、腎クリアランスは小さくなる。
4 パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは、血漿中濃度の増加に伴って大きくなる。
92回薬剤師国家試験 問155 解答解説
◆ 1について
1 ○ 糸球体ろ過は加圧ろ過であり、毛細血管内圧がボーマン嚢内圧よりも高いために起こる。
◆ 2について
2 ○ 糸球体の基底膜は陰性に荷電しているため、アニオン性薬物はカチオン性薬物よりろ過されにくい。
糸球体の基底膜は、シアル酸に富んだ糖タンパク質であり、
陰性に帯電しているため、アニオン性薬物は、
カチオン性薬物に比べて糸球体ろ過されにくい。
酸性薬物は、酸性官能基からH+が解離すると負電荷を持つようになるため、
酸性薬物は塩基性薬物よりろ過されにくい。
◆ 3について
3 × サリチル酸の尿細管からの再吸収は、尿がアルカリ性になると増加し、腎クリアランスは小さくなる。
→ 〇 サリチル酸の尿細管からの再吸収は、尿がアルカリ性になると減少し、腎クリアランスは大きくなる。
尿細管での薬物の再吸収は、
多くの場合、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従う。
この場合の尿のpHと再吸収量の関係は以下の通り。
・酸性薬物
尿のpHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は低下する。
尿のpHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は上昇する。
・塩基性薬物
尿のpHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は上昇する。
尿のpHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は低下する。
サリチル酸は酸性薬物であるので、
尿がアルカリ性になると、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎クリアランスは大きくなる。
◆ 4について
4 × パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは、血漿中濃度の増加に伴って大きくなる。
→ 〇 パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは、血漿中濃度の増加に伴って大きくなる。
パラアミノ馬尿酸は、糸球体ろ過と尿細管分泌により、
腎臓から尿中に排泄される。
パラアミノ馬尿酸の尿細管分泌には、
有機アニオン輸送系などのトランスポーターが関与しており、
血漿中濃度の増加に伴い、トランスポーターが混み合ってくるため、
尿細管分泌クリアランスが低下し、腎クリアランスは小さくなる。
血中濃度が高くなると、最終的に、
トランスポーターが飽和することにより、尿細管分泌は飽和する。
下の図は、パラアミノ馬尿酸における、
尿中排泄速度・腎クリアランスと、血漿中濃度の関係を示す。
このように、尿細管分泌に飽和が生じる薬物では、
腎クリアランスと血漿中濃度の関係は非線形を示し、
血漿中濃度の上昇に伴い、尿細管分泌クリアランスが低下するため、
腎クリアランスは低下する。