薬物動態の変動要因に関する記述 94回薬剤師国家試験問157

94回薬剤師国家試験 問157
薬物動態の変動要因に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
a カルバマゼピンは、連用によって代謝酵素の誘導を起こし、同じ量をくり返し投与した場合、血中濃度は上昇する。
b ワルファリンの血中濃度は、イトラコナゾールによるシトクロムP450の非特異的阻害により上昇する。
c テオフィリンの血中濃度は、シメチジンによる尿細管分泌の阻害により上昇する。
d ジゴキシンの血中濃度は、キニジンによる尿細管分泌の阻害により上昇する。

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94回薬剤師国家試験 問157 解答解説

 

◆ aについて
a × カルバマゼピンは、連用によって代謝酵素の誘導を起こし、同じ量をくり返し投与した場合、血中濃度は上昇する。
→ 〇 カルバマゼピンは、連用によって代謝酵素の誘導を起こし、同じ量をくり返し投与した場合、血中濃度は低下する。

 

カルバマゼピン(テグレトール)は、主にCYP3A4で代謝される。
カルバマゼピンは、CYP3A4やUGT1A1などの薬物代謝酵素の誘導作用、および、P糖タンパク質の誘導作用を有する。
よって、カルバマゼピンを同量で繰り返し投与すると、血中濃度は低下する。

 

 

◆ bについて
b ○ ワルファリンの血中濃度は、イトラコナゾールによるシトクロムP450の非特異的阻害により上昇する。

 

イトラコナゾール(イトリゾール)は、
CYP阻害作用及びP糖蛋白阻害作用を示す。
構造中にイミダゾール環やトリアゾール環などの含窒素複素環を有する化合物は、
複素環の窒素原子がCYPのヘム鉄に配位結合することにより、
CYPによる代謝を阻害する。
この機構によるCYPの阻害は、可逆的な阻害だと考えられている。
イトラコナゾールは、構造中にトリアゾール環を有しており、
CYPに対して、ヘム鉄への配位による可逆的阻害作用を示す。

 

薬物動態の変動要因に関する記述のうち正しいもの…94回薬剤師国家試験問157

 

ワルファリンは、光学異性体が存在し、
S−ワルファリンはR−ワーファリンの約5倍の抗凝固活性を示す。
S−ワルファリンは主にCYP2C9による代謝で消失し、
R−ワルファリンはCYP1A2やCYP3A4などによる代謝で消失する。

 

よって、ワルファリンとイトラコナゾールを併用すると、
イトラコナゾールのCYP阻害作用により、
ワルファリンの代謝が抑制され、ワルファリンの血中濃度が上昇する。
このことから、ワルファリンとイトラコナゾールは併用注意となっている。

 

 

◆ cについて
c × テオフィリンの血中濃度は、シメチジンによる尿細管分泌の阻害により上昇する。
→ 〇 テオフィリンの血中濃度は、シメチジンによるCYPの阻害により上昇する。

 

テオフィリンは、主にCYP1A2で代謝されて消失する。
また、一部のテオフィリンは、CYP3A4やCYP2E1でも代謝される他、
キサンチン骨格を有するので、キサンチンオキシダーゼでも代謝される。

 

シメチジン(タガメット)は、CYP阻害作用、および、腎尿細管などに存在する有機カチオントランスポーターのOCT2 ,MATE1,MATE2-Kの阻害作用を有する。
シメチジンは、イミダゾール環を有し、
CYPのヘム鉄に配位結合することで複合体を形成し、これを可逆的に阻害する。

 

薬物動態の変動要因に関する記述のうち正しいもの…94回薬剤師国家試験問157

 

よって、テオフィリンとシメチジンを併用すると、
シメチジンのCYP阻害作用により、
テオフィリンの代謝が抑制され、テオフィリンの血中濃度が上昇する。
このことから、テオフィリンとシメチジンは併用注意となっている。

 

 

◆ dについて
d ○ ジゴキシンの血中濃度は、キニジンによる尿細管分泌の阻害により上昇する。

 

ジゴキシンは、主に未変化体として、
腎臓で糸球体ろ過と尿細管分泌により尿中排泄されて消失する。
ジゴキシンの近位尿細管からの分泌には、
P糖タンパク質が関与すると考えられている。

 

キニジンは、CYP2D6阻害作用とP糖タンパク質阻害作用を有する。

 

よって、ジゴキシンとキニジンを併用すると、
キニジンのP糖タンパク質阻害作用により、
ジゴキシンの尿細管分泌が阻害され、ジゴキシンの血中濃度は上昇する。

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