薬物の胆汁中排泄に関する記述 105回薬剤師国家試験問173

105回薬剤師国家試験 問173
薬物の胆汁中排泄に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 肝実質細胞の胆管側細胞膜上に発現し、薬物や薬物の代謝物を胆汁中へ排出するトランスポーターの多くは、ATPの加水分解エネルギーを直接利用した輸送を行う。
2 一般に、分子量が小さい薬物ほど、胆汁中に排泄されやすい。
3 肝実質細胞から毛細胆管中に排出された薬物は、総胆管を経て十二指腸内に分泌される。
4 グルクロン酸抱合体となることで腸肝循環を受ける薬物は、腸内細菌がもつβ-グルクロニダーゼを阻害すると、血中濃度時間曲線下面積が増加する。
5 薬物の肝クリアランスは肝臓での代謝クリアランスで表され、胆汁中への排泄クリアランスは考慮されない。

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105回薬剤師国家試験 問173 解答解説

 

◆ 5について
5 × 薬物の肝クリアランスは肝臓での代謝クリアランスで表され、胆汁中への排泄クリアランスは考慮されない。

 

薬物の肝臓での消失経路として、代謝されて消失する経路と、
未変化体のまま胆汁排泄される経路がある。
よって、薬物の肝クリアランスは、
肝臓での代謝クリアランスと、
胆汁中への排泄クリアランスの合計で表される。

 

 

◆ 1,3について
1 ○ 肝実質細胞の胆管側細胞膜上に発現し、薬物や薬物の代謝物を胆汁中へ排出するトランスポーターの多くは、ATPの加水分解エネルギーを直接利用した輸送を行う。

 

薬物の胆汁中排泄は、
薬物が血中から肝実質細胞内に取り込まれ、
未変化体のまま、または、代謝を受けた後、
毛細胆管中に排泄されるという流れで行われる。

 

肝実質細胞の胆管側細胞膜上に発現し、物質の胆汁中排泄を担う担体の多くは、
ATPの加水分解エネルギーを直接利用した輸送である一次性能動輸送を行うトランスポータである。
具体的には、P糖タンパク質(MDR),
Multidrug Resistance-associated Protein 2(MRP2),
Breast Cancer Resistant Protein(BCRP),
Bile Salt Export Pump(BSEP)などがある。

 

 

◆ 2について
2 × 一般に、分子量が小さい薬物ほど、胆汁中に排泄されやすい。

 

分子量が500以上の薬物が胆汁中に排泄されやすい。

 

 

◆ 3,4について
3 ○ 肝実質細胞から毛細胆管中に排出された薬物は、総胆管を経て十二指腸内に分泌される。

 

4 × グルクロン酸抱合体となることで腸肝循環を受ける薬物は、腸内細菌がもつβ-グルクロニダーゼを阻害すると、血中濃度時間曲線下面積が増加する。
→ 〇 グルクロン酸抱合体となることで腸肝循環を受ける薬物は、腸内細菌がもつβ-グルクロニダーゼを阻害すると、血中濃度時間曲線下面積が減少する。

 

薬物の胆汁中排泄について、
肝実質細胞から毛細胆管中に排出された薬物は、
総胆管を経て十二指腸内に分泌されるが、
その後、そのまま糞便として排泄されるものと、
小腸から再吸収されるものがある。
小腸から再吸収された薬物は、門脈を経て肝臓に戻る。これを腸肝循環と呼ぶ。

 

薬物の腸管循環の様式の1つとして、
肝細胞内でグルクロン酸抱合を受けて水溶性が高まり、
胆汁中に排泄され、
小腸で腸内細菌がもつβ-グルクロニダーゼにより、
グルクロン酸抱合が脱抱合され、脂溶性が高まり、
小腸から再吸収されることがある。
このような薬物では、
腸内細菌がもつβ-グルクロニダーゼを阻害すると、
小腸でのグルクロン酸抱合の脱抱合が抑制され、
再吸収が抑制されるので、
血中濃度時間曲線下面積が減少する。

 

 

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