薬物の腎排泄に関する記述 101回薬剤師国家試験問169

101回薬剤師国家試験 問169
薬物の腎排泄に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 糸球体の基底膜は陽性に帯電しているため、酸性薬物は塩基性薬物よりろ過されやすい。
2 投与された薬物のすべてが腎排泄によって消失するとき、その腎クリアランスはクレアチニンクリアランスにほぼ等しい。
3 フェノールスルホンフタレインは、主に尿細管分泌により体内から消失するため、腎機能測定に用いられる。
4 OAT1は近位尿細管上皮細胞の刷子縁膜に存在し、細胞内の有機カチオンを管腔内へ排出する。
5 尿細管における弱塩基性薬物の再吸収は、尿のpH が大きくなると増大し、その腎クリアランスは低下する。

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101回薬剤師国家試験 問169 解答解説

 

◆ 1について
1 × 糸球体の基底膜は陽性に帯電しているため、酸性薬物は塩基性薬物よりろ過されやすい。
→ 〇 糸球体の基底膜は陰性に帯電しているため、酸性薬物は塩基性薬物よりろ過されにくい。

 

糸球体の基底膜は、シアル酸に富んだ糖タンパク質であり、
陰性に帯電しているため、負電荷を持つ物質は、
正電荷を持つ物質に比べて糸球体ろ過されにくい。
酸性薬物は、酸性官能基からH+が解離すると負電荷を持つようになるため、
酸性薬物は塩基性薬物よりろ過されにくい。

 

 

◆ 2について
2 × 投与された薬物のすべてが腎排泄によって消失するとき、その腎クリアランスはクレアチニンクリアランスにほぼ等しい。

 

薬物の腎クリアランス(CLr)とは、
腎臓で単位時間当たりに処理される薬物を含む血漿量であり、
腎臓で単位時間当たりに消失する薬物量を血漿量で表したものである。

 

薬物の腎クリアランス(CLr)は、
糸球体ろ過クリアランス,尿細管分泌クリアランス,尿細管再吸収率によって決まり、
下記の式で表される。

 

CLr = (fp・GFR + CLs)・(1−R) 

 

fp:血漿中非結合形分率
GFR:糸球体ろ過速度
CLs:尿細管分泌クリアランス R:再吸収率

 

クレアチニンは、血漿タンパク質と結合しないことから糸球体で自由にろ過され、
わずかに尿細管分泌されるが、ほとんどが糸球体ろ過のみで消失し、尿細管再吸収されない。
このことから、クレアチニンの腎クリアランス(クレアチニンクリアランス)は、
糸球体ろ過速度(GFR)に近い。
よって、投与された量のすべてが腎排泄によって消失する薬物でも、
糸球体ろ過の他、尿細管分泌や尿細管再吸収も受けるならば、
その薬物の腎クリアランスは、クレアチニンクリアランスと異なる場合がある。

 

101回薬剤師国家試験問169 薬物の腎排泄に関する記述のうち、正しいのはどれか

 

 

◆ 3について
3 ○ フェノールスルホンフタレインは、主に尿細管分泌により体内から消失するため、腎機能測定に用いられる。

 

体内に投与されたフェノールスルホンフタレイン(PSP)は、
糸球体ろ過で6%、尿細管分泌で94%が排泄されると考えられている。
フェノールスルホンフタレイン試験とは、
PSP溶液を静注または筋注し、
その後一定時間ごとに採尿し、PSPの排泄量(PSP値)を調べることで、
腎機能を測定する試験である。
フェノールスルホンフタレイン試験の15分値は腎血流量とよく相関する。
PSPは、大部分が尿細管分泌により排泄されるので、
PSP値を糸球体濾過値と比較することにより、
尿細管障害を推測することができる。

 

 

101回薬剤師国家試験問169 薬物の腎排泄に関する記述のうち、正しいのはどれか

 

 

◆ 4について
4 × OAT1は近位尿細管上皮細胞の刷子縁膜(尿細管管腔側膜)に存在し、細胞内の有機カチオンを管腔内へ排出する。
→ 〇 OAT1は近位尿細管上皮細胞の側底膜(血管側膜)に存在し、血液中の有機アニオンを細胞内へ取り込む。

 

有機アニオントランスポーターOAT1は、腎臓の近位尿細管上皮細胞の側底膜(血管側膜)に存在し、ジカルボン酸を細胞内から血液中に出し、有機アニオンを血液中から細胞内に取り込む交換輸送を行う。

 

関連問題
OAT1の駆動力 103回問166の4

 

 

◆ 5について
5 ○ 尿細管における弱塩基性薬物の再吸収は、尿のpH が大きくなると増大し、その腎クリアランスは低下する。

 

尿細管での薬物の再吸収は、
多くの場合、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従う。
この場合の尿のpHと再吸収量の関係は以下の通り。

 

・塩基性薬物
尿のpHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。
尿のpHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。

 

 

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