薬物相互作用に関する記述 102回薬剤師国家試験問169

102回薬剤師国家試験 問169
薬物相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 シクロスポリンの併用により、プラバスタチンの肝臓への移行が阻害され、その血中濃度は上昇する。
2 ノルフロキサシンの併用により、フルルビプロフェンの肝臓での代謝が阻害され、その薬理作用は増強される。
3 アスコルビン酸の併用により、サリチル酸の尿細管からの再吸収が阻害され、その腎クリアランスは大きくなる。
4 セントジョーンズワートの長期摂取により、ワルファリンの消失半減期が延長し、出血傾向が引き起こされる。
5 エリスロマイシンは、CYP3A4を不活性化し、フェロジピンの血中濃度を上昇させる。

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102回薬剤師国家試験 問169 解答解説

 

◆ 1について
1 ○ シクロスポリンの併用により、プラバスタチンの肝臓への移行が阻害され、その血中濃度は上昇する。

 

プラバスタチン(メバロチン)は、
主に未変化体として、胆汁中排泄されることにより消失する。

 

プラバスタチンの胆汁中排泄について、
プラバスタチンは酸性薬物であり、
肝実質細胞の血管側膜に存在する有機アニオントランスポーターのOATP1B1により、
血中から細胞内へ取り込まれ、
その後、胆管側膜に存在するMultidrug Resistance associated Protein 2(MRP2)や、
Bile Salt Export Pump(BSEP)により、
胆汁中に排泄されると考えられている。

 

シクロスポリンは、CYP3A4の阻害,P糖タンパク質の阻害, OATP1B1やOATP1B3等の有機アニオントランスポーターの阻害,BCRPの阻害など、多くの薬物相互作用が報告されている。

 

シクロスポリンとプラバスタチンを併用すると、
シクロスポリンはOATP1B1を阻害するため、
プラバスタチンの血中から肝実質細胞内への移行を抑制し、
プラバスタチンの血中濃度を上昇させると考えられる。

 

 

◆ 2について
2 × ノルフロキサシンの併用により、フルルビプロフェンの肝臓での代謝が阻害され、その薬理作用は増強される。

 

ニューキノロン系抗菌剤と非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を併用すると、
ニューキノロン系抗菌剤のGABAA阻害作用が、
非ステロイド性消炎鎮痛剤により増強され、痙攣を起こすことがある。
そのため、ニューキノロン系抗菌剤と非ステロイド性消炎鎮痛剤の併用は、
薬物の組み合わせにより、禁忌であったり、併用注意であったりする。
NSAIDsのフルルビプロフェン経口剤(フロベン),
フルルビプロフェンアキセチル注射剤(ロピオン),
エスフルルビプロフェン・ハッカ油経皮吸収製剤(ロコアテープ)は、
ニューキノロン系抗菌薬のノルフロキサシン,ロメフロキサシン,プルリフロキサシン,エノキサシン水和物との併用は禁忌とされている。

 

102回薬剤師国家試験問169 薬物相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか

 

なお、ニューキノロン系抗菌薬はCYP阻害作用を示すことがあり、
フルルビプロフェンは主にCYP2C9によって代謝されるが、
これらを併用した場合の代謝に関する相互作用は報告されていない。

 

 

◆ 3について
3 × アスコルビン酸の併用により、サリチル酸の尿細管からの再吸収が阻害され、その腎クリアランスは大きくなる。
→ 〇 アスコルビン酸の併用により、サリチル酸の尿細管からの再吸収が促進され、その腎クリアランスは小さくなる。

 

尿細管での薬物の再吸収は、
多くの場合、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従う。
この場合の尿のpHと再吸収量の関係は以下の通り。

 

・酸性薬物の再吸収
尿のpHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。
尿のpHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。

 

・塩基性薬物の再吸収
pHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。
pHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。

 

サリチル酸は酸性薬物であり、
単純拡散により尿細管再吸収されるので、
アスコルビン酸(ビタミンC)の併用により尿が酸性になると、
尿細管での再吸収が増大し、
腎クリアランスは低下する。

 

関連問題
尿細管における塩基性薬物の再吸収と尿のpH 91回問151の3

 

 

◆ 4について
4 × セントジョーンズワートの長期摂取により、ワルファリンの消失半減期が延長し、出血傾向が引き起こされる。
→ 〇 セントジョーンズワートの長期摂取により、ワルファリンの消失半減期が短縮し、薬効が減弱する。

 

セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は、
CYPの発現誘導作用、および、
P糖タンパク(MDR1)の発現誘導作用があり、
併用薬の血中濃度を低下させ、作用を減弱させるおそれがある。

 

ワルファリンは、光学異性体が存在し、
S−ワルファリンはR−ワーファリンの約5倍の抗凝固活性を示す。
S−ワルファリンは主にCYP2C9による代謝で消失し、
R−ワルファリンはCYP1A2やCYP3A4などによる代謝で消失する。

 

よって、ワルファリンとセントジョーンズワートを併用すると、
セントジョーンズワートのCYP誘導作用により、
ワルファリンの代謝が促進され、ワルファリンの薬効が減弱する。
このことから、ワルファリンとセントジョーンズワートは併用注意となっている。

 

 

◆ 5について
5 ○ エリスロマイシンは、CYP3A4を不活性化し、フェロジピンの血中濃度を上昇させる。

 

エリスロマイシンは、14員環マクロライド系抗生物質であり、
代謝物または代謝中間体がCYPのヘム鉄と共有結合を形成し、
安定な複合体となることでCYPの活性を阻害する。
この機構によるCYPの阻害は、不可逆的な阻害である。

 

102回薬剤師国家試験問169 薬物相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか

 

フェロジピン(スプレンジール)は、
主にCYP3A4で代謝されて消失する。
フェロジピンとエリスロマイシンを併用すると、
エリスロマイシンのCYP3A4阻害作用により、
フェロジピンの血中濃度が上昇する。

 

 

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