薬物の腎排泄に関する記述 108回薬剤師国家試験問172
108回薬剤師国家試験 問172
薬物の腎排泄に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは血中濃度に比例する。
2 サリチル酸の腎クリアランスは、アスコルビン酸の併用により増大する。
3 グルコースは、尿中にほとんど排泄されない。
4 ゲンタマイシンの血中半減期は、糸球体ろ過速度の低下により長くなる。
5 メトホルミンの腎クリアランスは、クレアチニンクリアランスより小さい。
108回薬剤師国家試験 問172 解答解説
◆ 1について
1 × パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは血中濃度に比例する。
パラアミノ馬尿酸は、糸球体ろ過と尿細管分泌により、
腎臓から尿中に排泄される。
パラアミノ馬尿酸の尿細管分泌には、
有機アニオン輸送系などのトランスポーターが関与しており、
血漿中濃度の増加に伴い、トランスポーターが混み合ってくるため、
尿細管分泌クリアランスが低下し、腎クリアランスは小さくなる。
血中濃度が高くなると、最終的に、
トランスポーターが飽和することにより、尿細管分泌は飽和する。
下の図は、パラアミノ馬尿酸における、
尿中排泄速度・腎クリアランスと、血漿中濃度の関係を示す。
このように、尿細管分泌に飽和が生じる薬物では、
腎クリアランスと血漿中濃度の関係は非線形を示し、
血漿中濃度の上昇に伴い、尿細管分泌クリアランスが低下するため、
腎クリアランスは低下する。
◆ 2について
2 × サリチル酸の腎クリアランスは、アスコルビン酸の併用により増大する。
→ 〇 サリチル酸の腎クリアランスは、アスコルビン酸の併用により低下する。
尿細管での薬物の再吸収は、
多くの場合、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従う。
この場合の尿のpHと再吸収量の関係は以下の通り。
・酸性薬物の再吸収
尿のpHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。
尿のpHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。
・塩基性薬物の再吸収
pHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。
pHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。
サリチル酸は酸性薬物であり、
単純拡散により尿細管再吸収されるので、
アスコルビン酸(ビタミンC)の併用により尿が酸性になると、
尿細管での再吸収が増大し、
腎クリアランスは低下する。
関連問題
尿細管における塩基性薬物の再吸収と尿のpH 91回問151の3
◆ 3について
3 ○ グルコースは、尿中にほとんど排泄されない。
グルコースは糸球体ろ過されるが、
通常は近位尿細管に存在するグルコーストランスポーターのSGLT1および2によりほぼ100%再吸収されるので、
尿中にほとんど排泄されない。
しかし、血中のグルコース濃度が高くなり、尿細管の原尿中のグルコース濃度が高くなると、
尿細管のグルコーストランスポーターが飽和し、再吸収されないグルコースが増え、
尿中に排泄されるグルコースは増える。
下の図は、物質の血漿中濃度と腎クリアランスとの関係を示すものであるが、
5の線分がグルコースのものである。
◆ 4について
4 ○ ゲンタマイシンの血中半減期は、糸球体ろ過速度の低下により長くなる。
ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質は、
主に糸球体ろ過により消失する。
よって、ゲンタマイシンの血中半減期は、
糸球体ろ過速度の低下により長くなる。
◆ 5について
5 × メトホルミンの腎クリアランスは、クレアチニンクリアランスより小さい。
→ 〇 メトホルミンの腎クリアランスは、クレアチニンクリアランスより大きい。
クレアチニンは、血漿タンパク質と結合しないことから糸球体で自由にろ過され、
わずかに尿細管分泌されるが、ほとんどが糸球体ろ過のみで消失し、尿細管再吸収されない。
このことから、クレアチニンの腎クリアランス(クレアチニンクリアランス)は、
糸球体ろ過速度(GFR)に近い。
メトホルミンは、ほとんど血漿タンパクと結合せず、
糸球体ろ過と尿細管分泌により消失する。
よって、メトホルミンの腎クリアランスは、
クレアチニンと比較して、尿細管分泌される分だけ大きくなる。
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