分子軌道法に基づく基底状態の分子の電子配置 107回薬剤師国家試験問91

107回薬剤師国家試験 問91
分子軌道法に基づく基底状態の分子の電子配置に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

1 電子は特定の原子に属さず、分子全体に広がっている。
2 電子は一つの軌道に何個でも入ることができる。
3 一つの軌道に同じ向きのスピンをもつ電子が複数入ることができる。
4 電子はエネルギーの高い軌道から優先的に入ることがある。
5 結合次数は、(結合性軌道の電子数−反結合性軌道の電子数)/2 で与えられる。

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題集 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題集 物理 化学結合,軌道の混成 へ

 

 

107回薬剤師国家試験 問91 解答解説

 

◆ 1について
1 〇 電子は特定の原子に属さず、分子全体に広がっている。

 

分子軌道法では、
原子から分子が形成されるのに伴い、
電子の軌道について分子全体に広がる分子軌道が形成され(σ軌道,π軌道など)、
電子はその分子軌道に入ることにより、
分子を構成する全ての原子核の周りに広っていると考える。

 

一方、
原子価結合法では、
共有結合において、
電子は結合を形成する2つの原子の原子軌道(s軌道,p軌道,混成軌道など)に入っており、
それらが電子対となって2つの原子間で共有されていると考える。

 

 

◆ 2について
2 × 電子は一つの軌道に何個でも入ることができる。
→ 〇 電子は一つの軌道に2個までしか入れない。

 

分子軌道の1つの軌道につき、
電子は互いにスピンを逆向きにして2個までしか入れない。

 

 

◆ 3について
3 × 一つの軌道に同じ向きのスピンをもつ電子が複数入ることができる。
→ 〇 一つの軌道に同じ向きのスピンをもつ電子は1つしか入れない。

 

パウリの排他原理によると、
1つの電子軌道に同じ量子数の電子を持つ電子は入れない。

 

詳細は下記のリンク先を参照
パウリの排他原理とスピン 107回問91の3

 

 

◆ 4について
4 × 電子はエネルギーの高い軌道から優先的に入ることがある。

 

分子軌道法では、電子はエネルギーの低い軌道から優先的に入る。
加えて、電子の入り方について、パウリの排他原理とフントの規則に従う。

 

フントの規則については下記のリンク先を参照
フントの規則とは

 

 

関連問題
基底状態の分子軌道では、反結合性軌道には電子が収容されない 89回問2a

 

 

◆ 5について
5 〇 結合次数は、(結合性軌道の電子数−反結合性軌道の電子数)/2 で与えられる。

 

結合次数は結合の強さを表す。

 

トップへ戻る