薬剤師国家試験過去問題解答解説科目別 物理 化学結合,軌道の混成

94回薬剤師国家試験問3 化学結合

94回薬剤師国家試験問3 化学結合

第94回薬剤師国家試験 問3
化学結合に関する下記の記述の正誤を判定してみよう。

 

a 1s軌道と3つの2p軌道が混成して、sp3混成軌道が形成される。
b メタンの炭素原子も水の酸素原子もsp3混成であるが、メタンのH−C−H結合角より水のH−O−H結合角の方が小さい。
c ボラン (BH3) のホウ素原子は、sp2混成である。
d エテン (エチレン) の炭素一炭素結合距離は、エタンの炭素−炭素結合距離より長い。

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題集 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題集 物理 化学結合,軌道の混成 へ

 

第94回薬剤師国家試験 問3 解答解説

 

◆ aについて
a × 1s軌道と3つの2p軌道が混成して、sp3混成軌道が形成される。
→ 〇 2s軌道と3つの2p軌道が混成して、sp3混成軌道が形成される。

 

★ 参考外部サイトリンク
混成軌道(猫でもわかる有機化学さん)

 

 

◆ bについて
b 〇 メタンの炭素原子も水の酸素原子もsp3混成であるが、メタンのH−C−H結合角より水のH−O−H結合角の方が小さい。

 

メタンのH−C−H結合角は、sp3混成軌道の理想角の109.5°に近い。
H2OのO原子はsp3混成軌道に2対の非共有電子対が入っているが、これらの非共有電子対が互いに反発することにより、H2OのH−O−Hの結合角はsp3混成軌道の理想角の109.5°よりも明らかに狭く、約104.5°と説明されている。

 

94回薬剤師国家試験問3 化学結合

 

★ 水のH−O−H結合角が104.5°であることの新たな説明

 

水の酸素原子はsp3混成軌道を形成していないと主張する説がある。同一周期では、原子番号が大きくなるほど2sと2p軌道のエネルギー差が大きくなり、酸素ではこの差が大きいので2sと2pの混成が起こりにくい。
この説によると、水の酸素は2p軌道で水素と共有結合を形成すると考える。その場合、H−O−Hの結合角は単純に行くと90°であるが、
O−Hの共有結合は極性が大きくイオン結合性を帯びるため、O−H同士が互いに強く反発すること、また、
酸素の有する非共有電子対と水素原子核が相互作用すること、
等の要因から、水のH−O−H結合角は104.5°となると説明する。

 

 

◆ cについて
c 〇 ボラン (BH3) のホウ素原子は、sp2混成である。

 

ボラン (BH3) のホウ素原子は、sp2混成軌道をとっており、かつ、空の2p軌道を持っている。
このホウ素原子の空軌道で電子対を受け取ることができるので、ボラン(BH3)はルイス酸である。

 

94回薬剤師国家試験問3 化学結合

 

 

◆ dについて
d × エテン (エチレン) の炭素−炭素結合距離は、エタンの炭素−炭素結合距離より長い。
→ 〇 炭素−炭素が二重結合であるエテン (エチレン) の炭素−炭素結合距離は、炭素−炭素が単結合であるエタンの炭素−炭素結合距離より短い。

 

★参考外部サイトリンク
共有結合によって結びついた物質(啓林館さん)

トップへ戻る