4-tert-ブチルシクロヘキサノンの還元反応生成物の立体 96回薬剤師国家試験問8
第96回薬剤師国家試験 問8
4-tert-ブチルシクロヘキサノンの還元反応生成物I及びIIに関するa〜dの記述の正誤を判定してみよう。。
a IとUは、互いにエナンチオマーの関係にある。
b IとUの安定な立体配座では、いずれもtert-ブチル基はアキシアル位を占める。
c Uの安定な立体配座では、水酸基はアキシアル位を占める。
d IとUは、いずれも不斉炭素をもたない。
第96回薬剤師国家試験 問8 解答解説
◆ a・dについて
d 〇 IとUは、いずれも不斉炭素をもたない。
a × IとUは、互いにエナンチオマーの関係にある。
→ 〇 TとUは、Tがtrans体、Uがcis体の立体異性体であり、互いにジアステレオマーの関係である。
TとUは不斉中心がないので、互いにエナンチオマーの関係にはなりえない。
TとUは、−OH基とtert-ブチル基のシクロヘキサン環の環平面に対する互いの位置について立体異性体の関係にあり、Tは−OH基とtert-ブチル基の環平面に対する位置が互いに逆なためtrans体であり、Uは同じであるためcis体である。
よって、TとUは互いにエナンチオマー以外の立体異性体の関係であるため、互いにジアステレオマーの関係である。
◆ b・cについて
b × IとUの安定な立体配座では、いずれもtert-ブチル基はアキシアル位を占める。
→ 〇 IとUの安定な立体配座では、いずれもtert-ブチル基はエクアトリアル位を占める。
c 〇 Uの安定な立体配座では、水酸基はアキシアル位を占める。
シクロヘキサン誘導体の最も安定な配座を考える際のポイントは、
置換基による1,3−ジアキシアル相互作用である。
1,3−ジアキシアル相互作用については、下記のリンク先を参照
シクロヘキサンの安定配座 ジアキシアル相互作用とひずみエネルギー
シクロヘキサン誘導体のいす形配座では、1,3−ジアキシアル相互作用の立体ひずみエネルギーの合計が小さいほど、その配座の安定性は高い。
1,3−ジアキシアル相互作用は置換基が大きいほど強くなることから、大きな置換基がエクアトリアル位になる立体配座はポテンシャルエネルギーが低く、安定性が高い。
TとUの立体配座の安定性については、下記の通り。
★参考外部サイトリンク
立体異性体(wikipediaさん)
キラリティーと鏡像(光学)異性体(役に立つ薬の情報〜専門薬学さん)
各選択肢について解説していく。