l-メントールとその立体異性体の立体化学 97回薬剤師国家試験問102
第97回薬剤師国家試験 問102
l-メントールに関する次の記述の正誤を判定してみよう。
1 l-メントールは不斉炭素原子を4つ持つ。
2 A はB のエナンチオマーである。
3 B はC のジアステレオマーである。
4 C はA の環を反転させたものである。
5 l-メントールの最も安定な配座はCである。
第97回薬剤師国家試験 問102 解答解説
◆ 1について
1 × l-メントールは不斉炭素原子を4つ持つ。
→ 〇 l-メントールは不斉炭素原子を3つ持つ。
◆ 2について
2 〇 A はB のエナンチオマーである。
AとBは、互いに全ての不斉中心の絶対配置が逆の立体異性体なので、
AとBは互いにエナンチオマー(鏡像異性体)の関係である。
★ 参考外部サイトリンク
立体異性体(wikipediaさん)
キラリティーと鏡像(光学)異性体(役に立つ薬の情報〜専門薬学さん)
◆ 3について
3 × B はC のジアステレオマーである。
→ 〇 BとCは同一化合物であり、互いに環反転した立体配座異性体である。
BとCを見比べると、エクアトリアル結合とアキシアル結合が互いに逆の立体配座異性体だとわかる。
よって、BとCは同一化合物で、互いに環反転した立体異性体である。
環反転については下記のリンク先を参照
アキシアル,エクアトリアル,環反転
★参考外部サイトリンク
シクロヘキサンの環反転(大学化学まとめさん)
◆ 4について
4 × C はA の環を反転させたものである。
→ ○ CはBの環を反転させたものである。
→ 〇 C とA は互いにエナンチオマーの関係である。
AとCは、互いに全ての不斉中心の絶対配置が逆の立体異性体なので、
AとCは互いにエナンチオマー(鏡像異性体)の関係である。
互いにエナンチオマーの関係にあるもの同士の旋光度について、絶対値は同じで左旋性(l)と右旋性(d)が互いに逆で、符号が+と−で逆という関係がある。
BまたはCはl-メントールであり、Aはそのエナンチオマーなので、d-メントールである。
◆ 5について
5 × l-メントールの最も安定な配座はCである。
→ 〇 l-メントールの最も安定な配座はBである。
BとCはl-メントールのいす形立体配座異性体である。
Bは置換基の結合が全てエクアトリアルなので、Bが最もエネルギーが小さく安定な配座である。
Cは置換基の結合が全てアキシアルなので、置換基によるジアキシアル相互作用のために全ひずみエネルギーが大きく、Bと比べると不安定な配座である。
シクロヘキサンの安定な配座については下記のリンク先を参照
シクロヘキサンの安定配座 ジアキシアル相互作用とひずみエネルギー
★ 参考外部サイトリンク
シクロヘキサンの立体配座(wikipediaさん)
★他サイトさんの解説へのリンク
第97回問102(e-RECさん)