セフジニルの旋光性 107回薬剤師国家試験問203
107回薬剤師国家試験 問202−203
60歳女性。背中の粉瘤(注)が感染を起こしたため皮膚科を受診し、以下の処方箋を持って薬局を訪れた。
(注) 粉瘤(アテローム):皮膚の下に袋状の嚢腫ができ、本来皮膚から剥げ落ちるはずの垢(角質)と皮膚の脂(皮脂)が、剥げ落ちずに袋の中にたまってしまってできた腫瘍の総称。
問202(実務)
今回処方された医薬品と併用するにあたり、注意が必要な服用中の薬剤はどれか。1つ選びなさい。
1 エナラプリルマレイン酸塩錠
2 L−アスパラギン酸Ca錠
3 レバミピド錠
4 クエン酸第一鉄ナトリウム錠
5 プラバスタチンNa錠
問203(物理・化学・生物)
セフジニルには不斉炭素があり、旋光性を示すので、旋光度測定で確認することができる。
日本薬局方セフジニル(C14H13N5O5S2:395.41)の旋光度の項には、以下のように記されている。
以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 日本薬局方では、旋光度の測定には、通例、光源として重水素放電管が用いられる。
2 セフジニルは右旋性である。
3 試料中に前問の併用注意薬物が共存する場合でも、セフジニル自体の比旋光度は変わらない。
4 この条件下で測定した場合、日本薬局方セフジニルの旋光度の範囲は、
−0.58〜−0.66°である。
5 層長200 mmの測定管を用いると、測定されるセフジニルの旋光度の値は1/2になる。
107回薬剤師国家試験 問202 解答解説
セフジニル(セフゾン)との相互作用が問題となるのは、
4のクエン酸第一鉄ナトリウム錠(フェロミア)である。
詳細は下記のリンク先を参照
セフジニルとの併用に注意が必要な薬剤 107回問202
107回薬剤師国家試験 問203 解答解説
◆ 1について
1 × 日本薬局方では、旋光度の測定には、通例、光源として重水素放電管が用いられる。
旋光度測定には、ナトリウムランプのナトリウムD線(589.0nmと589.6nmの可視部二重線)が用いられる。
なお、重水素放電管は紫外可視吸光度測定法の紫外部測定に用いられる。
関連問題
・旋光度測定は可視光の波長領域で行われる 91回問26b
◆ 2について
2 〇 セフジニルは右旋性である。
セフジニルの比旋光度([α]20 D)の値は−58〜−66°で符号が−(マイナス)であることから、
セフジニルは右旋性だとわかる。
下記のリンク先を参照
旋光の右旋性・左旋性と記号 84回問14b
◆ 3について
3 〇 試料中に前問の併用注意薬物が共存する場合でも、セフジニル自体の比旋光度は変わらない。
分子の旋光性は、
不斉中心を有する、または、分子不斉などで、
分子特有の構造の非対称性を有することに起因する。
セフジニルが鉄とキレートを形成することは、
セフジニルの不斉中心および構造の非対称性に影響しないと考えられるので、
旋光性に変化はないと考えられる。
◆ 4について
4 〇 この条件下で測定した場合、日本薬局方セフジニルの旋光度の範囲は、−0.58〜−0.66°である。
ある光学活性物質の単位層長・単位濃度当たりの旋光度を比旋光度と呼ぶ。
温度t、単色光X(波長または光線の名称)を用いて測定したときの旋光度の実測値αと比旋光度[α]について、下記の式が成り立つ。なお、lは層長で単位はmm、cは濃度で単位はg/mLである。
温度20℃、ナトリウムスペクトルD線を用いて測定したときの旋光度の実測値αと比旋光度[α]について、下記の式が成り立つ。
本問の解法は上式に与えられた数値を代入し、
旋光度の測定値αを求めればよい。
濃度(g/mL)を求める。
濃度 = 0.25g/25mL = 0.01g/mL
層長は100mmである。
式に数値を代入して、
旋光度αについて解く。
◆ 5について
5 × 層長200 mmの測定管を用いると、測定されるセフジニルの旋光度の値は1/2になる。
→ 〇 層長200 mmの測定管を用いると、測定されるセフジニルの旋光度の値は2倍になる。
旋光度の実測値αと比旋光度[α]の式は下記の通り。
上記より、一定条件下では、
旋光度の実測値αは濃度と層長に比例する。
よって、層長が100mmから200mmへ2倍になると、
旋光度の値は2倍になると考えられる。