スピン量子数が1/2である原子核が外部磁場の中に置かれると、そのエネルギーが2つのエネルギー準位に分かれる現象 110回薬剤師国家試験問4
110回薬剤師国家試験 問4
スピン量子数が1/2である原子核が外部磁場の中に置かれると、そのエネルギーが2つのエネルギー準位に分かれることを表しているのはどれか。1つ選びなさい。
1 化学シフト
2 McLafferty転位(マクラファティー転位)
3 ラジカル開裂
4 超微細分裂
5 ゼーマン分裂
110回薬剤師国家試験 問4 解答解説
スピン量子数が1/2である原子核が外部磁場の中に置かれると、
そのエネルギーが2つのエネルギー準位に分かれることを表しているのは、
選択肢5のゼーマン分裂である。
核スピンを持つ原子核(核スピン量子数I≠0)を外部磁場におくと、
高いエネルギー準位のものと低いエネルギー準位のものに分かれる。
この現象をゼーマン分裂という。
その時にラジオ波領域の電磁波のパルスを照射すると、
低いエネルギー準位の原子核が、
2つのエネルギー準位の差に相当するエネルギーを持つラジオ波を吸収して励起する。
これを核磁気共鳴現象(nuclear magnetic resonance:NMR)と呼ぶ。
以下、他の選択肢についての解説
◆ 1の化学シフトについて
核磁気共鳴(NMR)において、
ある原子核の共鳴周波数と、
基準物質の原子核の共鳴周波数との差を化学シフトと呼ぶ。
化学シフトは、原子核周辺の電子密度を反映し、
電子密度が高く、外部磁場に対する遮へい効果が大きいほど、
NMRスペクトルにおいては、
一般に、横軸を化学シフト(記号:δ)とし、
基準物質の原子核の化学シフトを0ppmとし、
他の原子核の化学シフトを基準物質との相対で示す。
◆ 2のMcLafferty転位(マクラファティー転位)について
マクラファティー転位(McLafferty転位)とは、質量分析において、
カルボニル化合物でみられるフラグメンテーションの1つであり、
カルボニルのγ位の水素がカルボニル酸素と相互作用する六員環遷移状態を経由し、
γ位とβ位の間で二重結合を形成するとともに、
α位とβ位の間の結合が開裂する現象である。
以下にマクラファティー転位の例を示す。