薬物送達システム (DDS) 86回薬剤師国家試験問179
86回薬剤師国家試験 問179
薬物送達システム (DDS) に関する記述について、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
a マトリックス型放出制御製剤とは、薬物が高分子やワックスなどの基剤中に分散されていて、基剤中の薬物分子の拡散が薬物放出の律速となる製剤をいう。
b 乳酸・グリコール酸共重合体のマイクロカプセルにリュープロレリン酢酸塩を封入して注射剤とした製剤は、筋注後体内で乳酸・グリコール酸共重合体が架橋され固化して、徐々にリュープロレリン酢酸塩を放出する。
c 大豆油とレシチンで調製したO/W型エマルションはリポソームとよばれ、生体適合性にすぐれ、また炎症部位に選択的に移行する薬物運搬体である。
d 経皮治療システムの長所としては、肝臓の初回通過効果を回避できること、投与の中断が容易であることがあげられるが、短所としては適用できる薬物が限られることである。
86回薬剤師国家試験 問179 解答解説
◆ aについて
a 〇 マトリックス型放出制御製剤とは、薬物が高分子やワックスなどの基剤中に分散されていて、基剤中の薬物分子の拡散が薬物放出の律速となる製剤をいう。
マトリックス型放出制御製剤では、薬物が高分子やワックスなどの基剤中に分散されており、基剤中の薬物分子の拡散や基剤の侵食(エロージョン)、溶解によって薬物が放出制御される。
マトリックス型放出制御製剤は、放出制御膜が無く、主薬を含むマトリックスが放出制御機能を果たす。
マトリックス型放出制御製剤のうち、投与後もマトリックス構造が維持されたまま、マトリックス内を薬物が拡散することにより放出されるタイプの製剤では、基剤中の薬物分子の拡散が薬物放出の律速となる。
◆ bについて
b × 乳酸・グリコール酸共重合体のマイクロカプセルにリュープロレリン酢酸塩を封入して注射剤とした製剤は、筋注後体内で乳酸・グリコール酸共重合体が架橋され固化して、徐々にリュープロレリン酢酸塩を放出する。
リュープリン注は、生体内分解性高分子の乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を基剤とするマイクロカプセルにリュープロレリン酢酸塩を封入した製剤であり、皮下注後、体内でPLGAが徐々に分解され、リュープロレリン酢酸塩が徐々に放出される持続性注射剤(持続性マイクロスフェア注射剤)である。
リュープリン注は皮下注であるが、リスパダールコンスタ(リスペリドン主薬の臀筋注)、サンドスタチンLAR(オクトレオチド主薬の臀筋注)など、筋注のPLGAマイクロスフェア持続性注射剤もある。
◆ cについて
c × 大豆油とレシチンで調製したO/W型エマルションはリポソームとよばれ、生体適合性にすぐれ、また炎症部位に選択的に移行する薬物運搬体である。
→ 〇 大豆油とレシチンで調製したO/W型エマルションはリピッドマイクロスフェア(脂肪乳剤)とよばれ、生体適合性にすぐれ、また炎症部位に選択的に移行する薬物運搬体である。
詳細は下記のリンク先を参照
リピッドマイクロスフェアとリポソーム 86回問179c
◆ dについて
d 〇 経皮治療システムの長所としては、肝臓の初回通過効果を回避できること、投与の中断が容易であることがあげられるが、短所としては適用できる薬物が限られることである。
経皮吸収型製剤とは、薬物を皮膚に投与することにより、全身循環血に吸収させる製剤である。
経皮吸収型製剤は次のような利点がある。
・長時間、製剤から一定速度で薬物が放出されるため、薬物の血中濃度が一定に維持され、薬効が持続する。
・皮膚から直接全身循環に入るため、肝臓での初回通過効果を回避できる。
・副作用が現れた時、貼付剤を剥がせばすぐに薬物の放出を中断できる。
・経口投与で問題となる消化管への副作用を回避できる。
・貼るだけで投与できるので、小児や高齢者にも使いやすい。
・貼付されていることを見れば服薬確認できるので、服薬忘れや重複投与を防ぎやすい。
薬物は受動拡散により皮膚を透過するが、
脂溶性が高く、分子量が小さい薬物ほど皮膚を透過しやすい。