経皮治療システムに関する記述 89回薬剤師国家試験問175
89回薬剤師国家試験 問175
経皮治療システムに関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
a 肝初回通過効果を回避できる。
b 日本薬局方の溶出試験法に適合しなければならない。
c 薬物の放出制御法には、膜制御型やマトリックス制御型などがある。
d 硝酸イソソルビド貼付剤は、狭心症治療剤であるため、心臓に近い位置に貼らなければ効果がない。
e ニトログリセリン貼付剤は、狭心症発作時の救急処置に用いられる。
89回薬剤師国家試験 問175 解答解説
◆ aについて
a 〇 肝初回通過効果を回避できる。
皮膚の血管から吸収された薬物は、肝臓を通らずに全身循環血流に入るため、肝臓での初回通過効果を回避できる。
◆ bについて
b × 日本薬局方の溶出試験法に適合しなければならない。
溶出試験は製剤からの主成分の溶出を試験するものであるが、
溶出試験が適用されるのは経口投与する製剤であり、
貼付剤には適用されない。
なお、貼付剤のうち、経皮吸収型製剤に適用される製剤試験法として、製剤均一性試験法,粘着力試験法,皮膚に適用する製剤の放出試験法がある。
関連問題
皮膚に適用する製剤の放出試験・粘着力試験 102回問283の3,4
◆ cについて
c 〇 薬物の放出制御法には、膜制御型やマトリックス制御型などがある。
膜制御型製剤は、リザーバー型放出制御製剤とも呼ばれ、放出制御膜を有する製剤である。
マトリックス型放出制御製剤は、放出制御膜が無く、マトリックスの基剤中に主薬が均一に分散されており、マトリックスが放出制御機能を果たす。
◆ dについて
d × 硝酸イソソルビド貼付剤は、狭心症治療剤であるため、心臓に近い位置に貼らなければ効果がない。
硝酸イソソルビド貼付剤(フランドルテープ)は、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患の発作の予防を目的とした貼付剤であるが、主薬の硝酸イソソルビドを皮膚の血管から吸収させ、全身循環血に送達する経皮吸収製剤であるため、心臓に近い位置に貼る必要はない。
硝酸イソソルビド貼付剤(フランドルテープ)は、胸部、上腹部又は背部のいずれかに貼付する。
◆ eについて
e × ニトログリセリン貼付剤は、狭心症発作時の救急処置に用いられる。
ニトログリセリン貼付剤は、主薬のニトログリセリンを皮膚の血管から吸収させ、全身循環血に送達する経皮吸収製剤であり、狭心症発作の予防を目的とした製剤である。
経皮吸収製剤は、投与後の血中濃度の立ち上がりが緩やかであるので、発作の寛解を目的とした治療には不適である。
狭心症発作の寛解には、ニトログリセリンや硝酸イソソルビドの舌下錠や舌下スプレー,口腔内スプレー等が用いられる。
経皮吸収製剤とは、薬物を皮膚に投与することにより、全身循環血に吸収させる製剤である。
経皮吸収製剤は次のような利点がある。
・長時間、製剤から徐々に薬物が放出されるため、薬物の血中濃度が一定に維持され、薬効が持続する。また、ゆっくりと吸収されるため、血中濃度の急な立ち上がりによる副作用の発現を抑えられる。
・薬物は皮膚から直接全身循環に入るため、小腸や肝臓での初回通過効果を回避できる。
・副作用が現れた時、貼付剤を剥がせばすぐに薬物の放出を中断できる。
・経口投与で問題となる消化管への副作用を回避できる。
・貼るだけで投与できるので、小児や高齢者にも使いやすい。