目的を達成するために実用化されている薬物送達システム(DDS) 90回薬剤師国家試験問178
90回薬剤師国家試験 問178
〔I〕欄の薬物とその効果等を向上させる目的を〔U〕欄に示す。〔U〕欄の目的を達成するために実用化されている〔V〕欄の薬物送達システム(DDS)として、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
90回薬剤師国家試験 問178 解答解説
正解はaとdである。
◆ a:ツロブテロールの早朝の気管支ぜん息発作の抑制
ツロブテロールは、気管支平滑筋のβ2受容体を刺激し、気管支平滑筋を弛緩させることで気管支を拡張させる。
ツロブテロールの経皮吸収製剤(ホクナリンテープ)は、ゆっくりと持続的にツロブテロールを放出する貼付剤であり、貼付開始から8〜12時間後に血中濃度が最も高くなる。
明け方・早朝に気管支が狭くなり、喘息発作が頻発することをモーニング・ディップと呼ぶ。
夜にホクナリンテープを貼付することで、モーニング・ディップの起こりやすい時間帯にツロブテロールの血中濃度を最も高くすることができる。
なお、ホクナリンテープはマトリックス型経皮吸収製剤である。
◆ b:プロゲステロンの避妊効果の持続化
避妊効果を持続的に得る製品として、黄体ホルモンを主薬とした注射剤,子宮内に挿入する避妊リング(ミレーナ),皮膚に貼付する避妊パッチ,二の腕の内側に挿入する避妊インプラントなどがあるが、プロゲステロンのリポソーム製剤でない。
なお、リポソーム製剤として、ドキソルビシンの注射やアムホテリシンBの注射がある。
関連問題
・ドキシル注 106回問55
◆ c:ドパミンの血液脳関門の透過増大
ドパミンの血液脳関門の透過増大を目的としたDDS製剤として、プロドラッグのレボドパがある。
ドパミンは血液脳関門を通過できないが、レボドパはアミノ酸トランスポーターのLAT1を介して脳内に移行する。LAT1(L-type amino acid transporter 1)は、フェニルアラニン,トリプトファン,ロイシンなどの中性アミノ酸を輸送するトランスポーターである。脳内移行したレボドパは、脱炭酸酵素により脱炭酸されてドパミンとなり、薬効を発揮する。
◆ d:アルプロスタジルの動脈硬化病変部への集積
リピッドマイクロスフェアとは、水中で植物油を界面活性剤のレシチンで乳化したo/w型エマルションである。分散媒である注射用水に、植物油が分散相として分散している。
アルプロスタジル注射液は、脂溶性のアルプロスタジルが大豆油滴内に封入され、卵黄レシチンで水中に乳化されたリピッドマイクロスフェア製剤である。
リピッドマイクロスフェアは、投与後にマクロファージなどの免疫細胞に貪食される性質があり、炎症部位、血管損傷部位、動脈硬化部位などへ集積する特性があるので、これらの部位に薬物を送達する受動的ターゲティングに利用される。