薬剤師国家試験過去問題集 DDSの総合問題

薬物送達システム(DDS)に関する記述 88回薬剤師国家試験問178

88回薬剤師国家試験 問178
薬物送達システム(DDS)に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

a 大豆油とレシチンで調製した脂肪乳剤(リピッドマイクロスフェア)は、炎症部位への薬物運搬体として用いられる。

 

b ニトログリセリン貼付剤は、生体内分解性の乳酸・グリコール酸共重合体を高分子膜に用いた製剤で、24時間にわたって薬物を一定速度で放出するので、狭心症発作の予防に用いられる。

 

c リポソームは、脂質二分子膜からなる閉鎖小胞で、脂質相および水相の両方の相を有しているため、脂溶性および水溶性いずれの薬物も包含することができる。

 

d マイクロカプセルは、通例、直径数μm〜数百μmの大きさで、薬物を芯物質としてこれを高分子膜などで被覆したもので、薬物の安定化や放出制御に利用される。

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88回薬剤師国家試験 問178 解答解説

 

◆ aについて
a 〇 大豆油とレシチンで調製した脂肪乳剤(リピッドマイクロスフェア)は、炎症部位への薬物運搬体として用いられる。

 

リピッドマイクロスフェア(脂肪乳剤)とは、水中に植物油を界面活性剤のレシチンで乳化したo/w型エマルションであり、脂溶性薬物を油滴内に封入して投与できる。
リピッドマイクロスフェアは、投与後にマクロファージなどの免疫細胞に貪食される性質があり、炎症部位、血管損傷部位、動脈硬化部位などへ集積する特性があるので、これらの部位に薬物を送達する受動的ターゲティングに利用される。
リピッドマイクロスフェアの受動的ターゲティング製剤として、
アルプロスタジル注やデキサメタゾンパルミチン酸エステル注がある。

 

関連問題
・リピッドマイクロスフェア製剤のアルプロスタジル注射液 102回問280,281

 

・デキサメタゾンパルミチン酸エステルのリピッドマイクロスフェア製剤 93回問178の4

 

 

◆ bについて
b × ニトログリセリン貼付剤は、生体内分解性の乳酸・グリコール酸共重合体を高分子膜に用いた製剤で、24時間にわたって薬物を一定速度で放出するので、狭心症発作の予防に用いられる。

 

→ 〇 ニトログリセリン貼付剤は、エチレン・酢酸ビニル共重合体を高分子膜に用いた製剤で、24時間にわたって薬物を一定速度で放出するので、狭心症発作の予防に用いられる。

 

乳酸・グリコール酸共重合体は、生体内分解性であり、持続性注射剤用マイクロスフェアの基剤として用いられる。

 

詳細は下記のリンク先を
ニトログリセリン貼付剤の放出制御機構 88回問178b

 

 

◆ cについて
c 〇 リポソームは、脂質二分子膜からなる閉鎖小胞で、脂質相および水相の両方の相を有しているため、脂溶性および水溶性いずれの薬物も包含することができる。

 

関連問題
リポソームの性質 94回問179

 

 

◆ dについて
d 〇 マイクロカプセルは、通例、直径数μm〜数百μmの大きさで、薬物を芯物質としてこれを高分子膜などで被覆したもので、薬物の安定化や放出制御に利用される。

 

生体内分解性高分子のポリ乳酸,または,ポリ乳酸・グリコール酸共重合体を基剤とするマイクロカプセルに主薬を封入した持続性の注射剤(持続性マイクロスフェア注射剤)が実用化されている。
本製剤は、投与後、体内で生分解性高分子が徐々に分解され、主薬が徐々に放出されるので、持続性の放出制御製剤となる。
持続性マイクロスフェア注射剤として、リュープリン(リュープロレリン主薬の皮下注)、リスパダールコンスタ(リスペリドン主薬の臀筋注)、サンドスタチンLAR(オクトレオチド主薬の臀筋注)などがある。

 

乳酸・グリコール酸共重合体の性質と用途 102回問175の2

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