試料の前処理 90回薬剤師国家試験問32

90回薬剤師国家試験 問32
試料前処理法に関する記述のうち、正しいものはどれか。

 

1 試料溶液中のカルボン酸を有機溶媒層に抽出するには、カルボン酸がイオン型となるようにpHを調整するのがよい。
2 水・有機溶媒からなる溶媒抽出法において、アセトンは優れた有機溶媒である。
3 逆相系固相抽出法の利点の一つは、溶媒抽出法と比べて有機溶媒の使用量を減らせる点である。
4 酸を用いる除タンパク法において、塩酸は優れた除タンパク効果を示す。
5 有機溶媒が示す除タンパク効果は、イオン結合の切断に基づく。

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90回薬剤師国家試験 問32 解答解説

 

◆ 1について
1 × 試料溶液中のカルボン酸を有機溶媒層に抽出するには、カルボン酸がイオン型となるようにpHを調整するのがよい。
→ 〇 試料溶液中のカルボン酸を有機溶媒層に抽出するには、カルボン酸が分子型となるようにpHを調整するのがよい。

 

詳細は下記のリンク先を参照
酸性物質の溶媒抽出と水相のpH 92回問28b

 

 

◆ 2について
2 × 水・有機溶媒からなる溶媒抽出法において、アセトンは優れた有機溶媒である。

 

水・有機溶媒からなる溶媒抽出法において、アセトンのような水と混和して一層になるような有機溶媒は用いられない。
詳細は下記のリンク先を参照
溶媒抽出で用いる有機溶媒 95回問29a

 

 

◆ 3について
3 〇 逆相系固相抽出法の利点の一つは、溶媒抽出法と比べて有機溶媒の使用量を減らせる点である。

 

試料前処理の固相抽出法は溶媒抽出法と比較して、
一般に、操作が簡便であり、回収率が高く、抽出効率が高く有機溶媒の使用量が少なくて済む。

 

 

◆ 4について
4 × 酸を用いる除タンパク法において、塩酸は優れた除タンパク効果を示す。

 

水溶液中のタンパク質の高次構造を壊し、不溶化して沈殿にして除去する方法の1つとして、酸変性法がある。

 

酸変性法は、かさ高い酸を加えることで、タンパク質に結合して高次構造の形成に働く水分子を追い出し、
タンパクを変性させて疎水性部分を表面に露出させて不溶化する。

 

酸変性法で用いられる酸は立体的にかさ高いものである必要があり、トリクロロ酢酸や過塩素酸などが用いられる。
塩酸,硫酸,硝酸は酸としては強いが、かさ高くはないので良い徐タンパク効果を示さず、酸変性法では用いられない。

 

関連問題
除タンパクに用いる酸として最も適しているのはどれか 108回問5

 

 

◆ 5について
5 × 有機溶媒が示す除タンパク効果は、イオン結合の切断に基づく。
→ 〇 有機溶媒が示す除タンパク効果は、疎水性相互作用やπ−π相互作用の切断に基づく。

 

有機溶媒変性法による徐タンパクは、
水と均一に混和する有機溶媒を添加することで、
有機溶媒の分子がタンパク質と接触し、タンパク質中の疎水性相互作用やπ−π相互作用を切断し、高次構造を破壊して変性させ、疎水性部分を表面に露出させて不溶化する。

 

関連問題
有機溶媒変性法での徐タンパクで用いる有機溶媒 97回問98の3

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