薬物代謝に関する記述 94回薬剤師国家試験問155
94回薬剤師国家試験 問155
薬物代謝に関する記述について、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
a イミプラミンは、シトクロムP450によるN−脱メチル化を受けて活性代謝物へ変換される。
b ソリブジンの代謝物である5−ブロモビニルウラシルは、ジヒドロピリミジン脱水素酵素を阻害し、5−フルオロウラシルの代謝を抑制する。
c サラゾスルファピリジンは、腸内細菌による酸化的代謝を受け、5−アミノサリチル酸へ変換されて抗炎症作用を示す。
d モルヒネは、小腸と肝臓で3位と6位の水酸基が主に硫酸抱合され、そのうち6位抱合体は鎮痛作用を示す。
94回薬剤師国家試験 問155 解答解説
◆ aについて
a ○ イミプラミンは、シトクロムP450によるN−脱メチル化を受けて活性代謝物へ変換される。
イミプラミン(トフラニール)は、CYP2D6により水酸化を受け2−ヒドロキシ体となり、
CYP1A2,CYP3A4,CYP2C19によりN−脱メチル化を受け活性代謝物であるデシプラミンとなる。
デシプラミンの鎮静作用,抗うつ作用はイミプラミンと同様で,ノルアドレナリン再取込み阻害作用はイミプラミンより強い。
なお、イミプラミンとデシプラミンのCYP2D6による代謝物の2−ヒドロキシ体は、イミプラミンの未変化体と同程度のノルアドレナリン及びセロトニン再取り込み阻害作用を示す。
イミプラミンとデシプラミンの2−ヒドロキシ体は、グルクロン酸抱合を受け、排泄される。
◆ bについて
b ○ ソリブジンの代謝物である5−ブロモビニルウラシルは、ジヒドロピリミジン脱水素酵素を阻害し、5−フルオロウラシルの代謝を抑制する。
抗ウイルス薬のソリブジンの代謝物の5−ブロモビニルウラシルは、ジヒドロピリミジン脱水素酵素を不可逆的に阻害する。
5−フルオロウラシル(5−FU)はジヒドロピリミジン脱水素酵素により還元され、不活化する。
ソリブジンと5−FUを併用すると、ソリブジンの代謝物の5−ブロモビニルウラシルによりジヒドロピリミジン脱水素酵素が阻害されることにより、5−FUの血中濃度が上昇し、血液障害などの重篤な副作用が現れ、死に至ることもある。
過去にソリブジンと5−FUが併用されることにより、死者を出すほどの薬害が発生している。
この薬害はソリブジン事件として知られている。
◆ cについて
c × サラゾスルファピリジンは、腸内細菌による酸化的代謝を受け、5−アミノサリチル酸へ変換されて抗炎症作用を示す。
→ 〇 サラゾスルファピリジンは、腸内細菌による還元的代謝を受け、5−アミノサリチル酸へ変換されて抗炎症作用を示す。
4のサラゾスルファピリジン(アザルフィジン)は、
主に大腸の腸内細菌のアゾ還元酵素によりアゾ基(−N=N−)が還元され、
5−アミノサリチル酸とスルファピリジンに分解される。
5−アミノサリチル酸(5−ASA)が抗炎症作用を発揮すると考えられている。
5−アミノサリチル酸(5−ASA)は、
N-アセチル転移酵素により、
アミノ基がアセチル化され、不活化する。
◆ dについて
d × モルヒネは、小腸と肝臓で3位と6位の水酸基が主に硫酸抱合され、そのうち6位抱合体は鎮痛作用を示す。
→ 〇 モルヒネは、小腸と肝臓で3位と6位の水酸基が主にグルクロン酸抱合され、そのうち6位抱合体は鎮痛作用を示す。
モルヒネは、小腸や肝臓において、主にUDP−グルクロン酸転移酵素により3位及び6位のOHがグルクロン酸抱合されて、モルヒネ- 3 -グルクロニド及びモルヒネ- 6 -グルクロニドに代謝される。
モルヒネのグルクロン酸抱合体のうち、
モルヒネ- 3 -グルクロニドは薬理活性を有しないが、
モルヒネ- 6 -グルクロニドは薬理活性を有する。