薬物代謝に関する記述 83回薬剤師国家試験問164
83回薬剤師国家試験 問164
薬物代謝に関する次の記述の正誤について、誤っているものはどれか。1つ選びなさい
a 一つの薬物で、薬物代謝酵素に対して誘導作用と阻害作用の両方を示すものがある。
b 新生児の核黄疸治療の目的で、フェノバルビタールを投与することがある。これは代謝酵素誘導によりグルクロン酸抱合能を高めようとするものである。
c ペニシリンとプロベネシドを併用すると、ペニシリンの血中消失半減期が延びる。これはプロベネシドによりペニシリンの代謝が抑制されるからである。
d プリミドンは肝臓で代謝を受け、一部フェノバルビタールになる。
83回薬剤師国家試験 問 164 解答解説
◆ aについて
a 〇 一つの薬物で、薬物代謝酵素に対して誘導作用と阻害作用の両方を示すものがある。
薬物代謝酵素に対して誘導作用と阻害作用の両方を示すものとして、
オメプラゾールやエファビレンツ(ストックリン)などがある。
◆ bについて
b 〇 新生児の核黄疸治療の目的で、フェノバルビタールを投与することがある。これは代謝酵素誘導によりグルクロン酸抱合能を高めようとするものである。
核黄疸とは、血中ビリルビン濃度が上昇し、
脳にビリルビンが蓄積し、脳の神経細胞が損傷を受けることである。
間接型ビリルビンは、肝臓でグルクロン酸抱合を受けて直接型ビリルビンとなり、胆汁中に排泄される。
フェノバルビタールは、UDP-グルクロン酸転移酵素やCYPなど、
複数種の薬物代謝酵素を誘導する作用がある。
よって、フェノバルビタールは、ビリルビンのグルクロン酸抱合を促進し、
ビリルビンの胆汁中排泄を促進する。
そのため、新生児の核黄疸治療の目的で、フェノバルビタールを投与することがある。
◆ cについて
c × ペニシリンとプロベネシドを併用すると、ペニシリンの血中消失半減期が延びる。これはプロベネシドによりペニシリンの代謝が抑制されるからである。
→ 〇 ペニシリンとプロベネシドを併用すると、ペニシリンの血中消失半減期が延びる。これはプロベネシドによりペニシリンの尿細管分泌が抑制されるからである。
プロベネシドとペニシリンは、腎臓の近位尿細管の有機アニオントランスポーター(OAT)を介して尿中へ分泌される。
プロベネシドとペニシリンを併用すると、プロベネシドによりペニシリンのOATによる尿細管分泌が競合阻害され、ペニシリンの血中消失半減期が延長する。
この相互作用を利用し、ペニシリンの血中濃度を維持するために、
プロベネシドが併用されることがある。
◆ dについて
d 〇 プリミドンは肝臓で代謝を受け、一部フェノバルビタールになる。
プリミドンは、主として肝臓で一部が酸化を受け、
フェノバルビタールとフェニルエチルマロンアミドになる。
これらはいずれも薬理活性を有する活性代謝物である。