薬物の代謝に関する記述 89回薬剤師国家試験問153
89回薬剤師国家試験 問153
薬物の代謝に関する記述の正誤について、誤っているのはどれか。
1つ選びなさい。
a 新生児ではグルクロン酸抱合能が低く、これが核黄疸や薬物によるグレイ症候群の発症に関係する。
b シトクロムP450は、主に加水分解反応を触媒する。
c 1つの薬物が、シトクロムP450に対して誘導作用と阻害作用の両方を示す場合がある。
d 2つの薬物を同時に投与したとき、同一のシトクロムP450分子種で代謝される場合には、薬物相互作用の原因となることがある。
89回薬剤師国家試験 問153 解答解説
◆ aについて
a ○ 新生児ではグルクロン酸抱合能が低く、これが核黄疸や薬物によるグレイ症候群の発症に関係する。
新生児はグルクロン酸抱合能が低い。
核黄疸とは、血中ビリルビン濃度が上昇し、
脳にビリルビンが蓄積し、脳の神経細胞が損傷を受けることである。
間接ビリルビンはグルクロン酸抱合を受けて直接ビリルビンとなり、
胆汁中に排泄されるため、
グルクロン酸抱合能が低いと、ビリルビンが蓄積しやすく、
核黄疸を発症しやすい。
グレイ症候群(灰白症候群)は、嘔吐・下痢,低体温症,皮膚蒼白,循環虚脱,呼吸停止などを特徴とする一連の症候であり,しばしば死に至る。
グレイ症候群の原因の1つとして、クロラムフェニコールの副作用がある。
クロラムフェニコールの消失にグルクロン酸抱合が関与していると考えられており、
グルクロン酸抱合能が低いと、クロラムフェニコールが蓄積しやすく、
グレイ症候群を発症しやすくなる。
このことから、クロラムフェニコールの内服薬と注射剤は、
新生児には投与禁忌となっている。
◆ bについて
b × シトクロムP450は、主に加水分解反応を触媒する。
シトクロムP450が触媒として働く反応は、基本的に酸化反応であり、
一部還元反応もあるが、加水分解はない。
◆ cについて
c ○ 1つの薬物が、シトクロムP450に対して誘導作用と阻害作用の両方を示す場合がある。
薬物代謝酵素に対して誘導作用と阻害作用の両方を示すものとして、
オメプラゾールやリトナビル,エファビレンツ(ストックリン)などがある。
◆ dについて
d ○ 2つの薬物を同時に投与したとき、同一のシトクロムP450分子種で代謝される場合には、薬物相互作用の原因となることがある。
例えば、リトナビルは、CYP3A4で代謝されるが、
CYP3A4との親和性が強いため、
他のCYP3A4で代謝される薬物の代謝を競合的に阻害し、
血中濃度を上昇させる。
このことから、リトナビルと併用禁忌となっている薬剤が多数存在する。