薬物代謝に関する記述 93回薬剤師国家試験問155
93回薬剤師国家試験 問155
薬物代謝に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
a 代謝により極性の増大した薬物は、排泄されにくくなる。
b シトクロムP450(CYP)の分子種のうち、CYP3A4は最も多くの薬物を代謝する。
c ケトコナゾールは、核内レセプターに結合して代謝反応を阻害する。
d ワルファリンの抗血液凝固作用は、フェノバルビタールとの併用により減弱する。
93回薬剤師国家試験 問155 解答解説
◆ aについて
a × 代謝により極性の増大した薬物は、排泄されにくくなる。
→ 〇 代謝により極性の増大した薬物は、排泄されやすくなる。
一般に、薬物は代謝されると、極性が増大することにより、
水溶性が高くなり、体外に排出されやすくなる。
ただし、第U相反応のアセチル抱合とメチル抱合では、水溶性が低下する。
◆ bについて
b ○ シトクロムP450(CYP)の分子種のうち、CYP3A4は最も多くの薬物を代謝する。
ヒト肝臓において、シトクロムP450分子種のうち、
最も多く存在するのがCYP3A4であり、
最も多くの薬物の代謝に関与するのもCYP3A4である。
◆ cについて
c × ケトコナゾールは、核内レセプターに結合して代謝反応を阻害する。
構造中にイミダゾール環やトリアゾール環などの含窒素複素環を有する化合物は、
複素環の窒素原子がCYPのヘム鉄に配位結合して複合体を形成することにより、
CYPによる代謝を阻害することがある。
この機構によるCYPの阻害は、可逆的な阻害だと考えられている。
ケトコナゾールは、イミダゾール系抗真菌薬であり、
イミダゾール環を有するので、
ヘム鉄に配位し、CYPの活性を阻害すると考えられる。
なお、核内レセプターが関与する相互作用として、
薬物代謝酵素の誘導がある。
◆ dについて
d ○ ワルファリンの抗血液凝固作用は、フェノバルビタールとの併用により減弱する。
フェノバルビタールは、UDP-グルクロン酸転移酵素やCYPなど、
複数種の薬物代謝酵素を誘導する作用、および、
P糖タンパク質を誘導する作用を有する。
ワルファリンは、光学異性体が存在し、
S−ワルファリンはR−ワーファリンの約5倍の抗凝固活性を示す。
S−ワルファリンは主にCYP2C9による代謝で消失し、
R−ワルファリンはCYP1A2やCYP3A4などによる代謝で消失する。
よって、ワルファリンとフェノバルビタールを併用すると、
フェノバルビタールのCYP誘導作用により、
ワルファリンの代謝が促進され、ワルファリンの薬効が減弱する。
このことから、ワルファリンとフェノバルビタールは併用注意となっている。