薬物代謝酵素に関する記述 96回薬剤師国家試験問154
96回薬剤師国家試験 問154
薬物代謝酵素に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
1 酵素誘導作用と酵素阻害作用の両方を示す薬物がある。
2 フェノバルビタールは、グルクロン酸転移酵素を含む複数種の薬物代謝酵素を誘導する。
3 シメチジンは、シトクロムP450(CYP)のヘム鉄と複合体を形成してCYPの代謝活性を増強する。
4 リファンピシンは、肝細胞内の核内受容体に結合してCYP3A4の発現を阻害する。
96回薬剤師国家試験 問154 解答解説
◆ 1について
1 ○ 酵素誘導作用と酵素阻害作用の両方を示す薬物がある。
薬物代謝酵素に対して誘導作用と阻害作用の両方を示すものとして、
オメプラゾールやエファビレンツ(ストックリン)などがある。
◆ 2について
2 ○ フェノバルビタールは、グルクロン酸転移酵素を含む複数種の薬物代謝酵素を誘導する。
フェノバルビタールは、CYPやUDP-グルクロン酸転移酵素など、
複数種の薬物代謝酵素を誘導する作用がある。
◆ 3について
3 × シメチジンは、シトクロムP450(CYP)のヘム鉄と複合体を形成してCYPの代謝活性を増強する。
→ 〇 シメチジンは、シトクロムP450(CYP)のヘム鉄と複合体を形成してCYPの代謝活性を阻害する。
構造中にイミダゾール環やトリアゾール環などの含窒素複素環を有する化合物は、
複素環の窒素原子がCYPのヘム鉄に配位結合して複合体を形成することにより、
CYPによる代謝を阻害することがある。
この機構によるCYPの阻害は、可逆的な阻害だと考えられている。
シメチジン(タガメット)は、イミダゾール環を有し、
CYPのヘム鉄に配位結合することで複合体を形成し、これを可逆的に阻害する。
関連問題
ヘム鉄に配位することでCYP3A4の活性を阻害する薬物の構造 103回問45
◆ 4について
4 × リファンピシンは、肝細胞内の核内受容体に結合してCYP3A4の発現を阻害する。
→ 〇 リファンピシンは、肝細胞内の核内受容体に結合してCYP3A4の発現を誘導する。
リファンピシンは、CYPやUDP-グルクロン酸転移酵素などの薬物代謝酵素の誘導作用、薬物排出トランスポーターのP-糖タンパク質の誘導作用を有している。
リファンピシンの薬物代謝酵素の誘導作用について、
併用薬の血中濃度が低下し、薬効が減弱することが多い。
しかし、代謝酵素により活性代謝物を生成する薬物の中には、
リファンピシンの薬物代謝酵素の誘導作用により、
活性代謝物の血中濃度が上昇し、薬効が増強するものもある。
例えば、クロピドグレル(プラビックス)は、
主にCYP2C19により代謝されて活性代謝物を生成するが、
リファンピシンを併用すると、CYP2C19の発現誘導により、
活性代謝物の血中濃度が上昇し、血小板阻害作用が増強される恐れがある。
そのため、リファンピシンとクロピドグレルの併用は避けることが望ましいとされている。
リファンピシンのP-糖タンパク質の誘導作用について、
併用薬の血中濃度が低下し、薬効が減弱することがある。
この相互作用の1例として、
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩錠(ベムリディ)は、
P-糖タンパク質の基質であり、リファンピシンを併用すると、
P-糖タンパク質のの発現誘導により、血中濃度が低下し、薬効が減弱するおそれがある。
そのため、リファンピシンとテノホビル アラフェナミドフマル酸塩錠(ベムリディ)は併用禁忌となっている。
さらに、リファンピシンは、有機アニオントランスポーターのOATP1B1,OATP1B3を阻害する作用を有している。
OATP1B1,OATP1B3は、肝細胞の血管側の膜上に存在し、
血中から肝細胞内への薬物の取り込みに関与する。
リファンピシンのOATP1B1,OATP1B3の阻害により、
併用薬の血中濃度が上昇し、薬効が増強することがある。
この相互作用の1例として、
ペマフィブラート(パルモディア)は、OATP1B1,OATP1B3の基質であり、
リファンピシンを併用すると、
OATP1B1,OATP1B3の発現誘導により、血中濃度が上昇するおそれがある。
そのため、リファンピシンとペマフィブラート(パルモディア)は併用禁忌となっている。