薬物相互作用の回避方法に関する記述 99回薬剤師国家試験問171
99回薬剤師国家試験 問171
薬物相互作用の回避方法に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選びなさい。
1 セフジニルは鉄イオンとキレートを形成して溶解性が低下するため、鉄剤の併用が必要な場合には、互いの服用時間を2〜3時間ずらす。
2 セントジョーンズワートは、小腸上皮細胞のCYP3A4やP-糖タンパク質の発現を誘導するので、タクロリムス水和物との併用を避ける。
3 プロベネシドはアンピシリンの腎尿細管分泌を阻害するので、抗生物質を腎排泄型でないものに変更する。
4 シメチジンは肝CYP3A4を阻害し、トリアゾラムの作用時間の著しい延長を引き起こすので、睡眠導入薬を非代謝型であるブロチゾラムに変更する。
5 フルルビプロフェンとノルフロキサシンを併用すると痙れんを起こすことがあるので、フルルビプロフェンをアセトアミノフェンに変更する。
99回薬剤師国家試験 問171 解答解説
薬物相互作用の回避方法に関する記述のうち、
誤っているのは、選択肢4の記述である。
構造中にイミダゾール環やトリアゾール環などの含窒素複素環を有する化合物は、
複素環の窒素原子がCYPのヘム鉄に配位結合して複合体を形成することにより、
CYPによる代謝を阻害することがある。
この機構によるCYPの阻害は、可逆的な阻害だと考えられている。
シメチジン(タガメット)は、イミダゾール環を有し、
CYPのヘム鉄に配位結合することで複合体を形成し、これを可逆的に阻害する。
シメチジンは、特にCYP3A4とCYP2D6に対して強い阻害効果を有することが報告されている。
トリアゾラム(ハルシオン)は、主にCYP3A4で代謝されて消失する。
シメチジンとトリアゾラムを併用すると、
シメチジンのCYP3A4阻害作用により、トリアゾラムの代謝が阻害され、
トリアゾラムの作用の増強及び作用時間の延長が引き起こされ、
その影響は著しいと考えられる。
ブロチゾラム(レンドルミン)も、
主にCYP3A4で代謝されて消失するので、
シメチジンとトリアゾラムを併用すると、
ブロチゾラムの作用の増強及び作用時間の延長が引き起こされ、
その影響は著しいと考えられる。
よって、シメチジンの併用薬として、
トリアゾラムもブロチゾラムも適切ではない。
関連問題
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以下、他の選択肢について
◆ 1について
1 ○ セフジニルは鉄イオンとキレートを形成して溶解性が低下するため、鉄剤の併用が必要な場合には、互いの服用時間を2〜3時間ずらす。
関連問題
セフジニルの調剤と服薬指導 103回問210,211
◆ 2について
2 ○ セントジョーンズワートは、小腸上皮細胞のCYP3A4やP-糖タンパク質の発現を誘導するので、タクロリムス水和物との併用を避ける。
セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)には、
P-糖タンパクの発現誘導作用、
および、小腸や肝臓でのCYPの発現誘導作用があり、
併用薬の血中濃度を低下させ、作用を減弱させるおそれがある。
タクロリムスは、主としてCYP3A4及びCYP3A5で代謝されて消失する。
また、タクロリムスはP-糖タンパク質の基質である。
タクロリムスとセントジョーンズワートを併用すると、
セントジョーンズワートにより、CYP3A4やP-糖タンパク質が誘導され、
タクロリムスの代謝・排泄が促進され、
タクロリムスの血中濃度が低下する恐れがある。
そのため、タクロリムス水和物の内服剤,または,
注射剤(プログラフ,グラセプター)を投与中は、
セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)の摂取は避ける。
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◆ 3について
3 ○ プロベネシドはアンピシリンの腎尿細管分泌を阻害するので、抗生物質を腎排泄型でないものに変更する。
一般に、アンピシリンなどのペニシリン系抗生物質は、
主に糸球体ろ過と尿細管分泌により尿中排泄されて消失する。
プロベネシドは、主な消失経路の1つとして、
尿細管分泌がある。
アンピシリンとプロベネシドは、
酸性薬物であり、これらの尿細管分泌には、
近位尿細管の有機アニオントランスポーター(OAT)が関与する。
プロベネシドとアンピシリンを併用すると、
プロベネシドによりアンピシリンのOATによる尿細管分泌が競合阻害され、
アンピシリンの血中濃度は上昇し、血中消失半減期は延長する。
なお、この相互作用を利用し、ペニシリンの血中濃度を維持するために、
あえてプロベネシドが併用されることがある。
◆ 5について
5 ○ フルルビプロフェンとノルフロキサシンを併用すると痙れんを起こすことがあるので、フルルビプロフェンをアセトアミノフェンに変更する。
ニューキノロン系抗菌剤と非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を併用すると、
ニューキノロン系抗菌剤のGABAA阻害作用が、
非ステロイド性消炎鎮痛剤により増強され、痙攣を起こすことがある。
そのため、ニューキノロン系抗菌剤と非ステロイド性消炎鎮痛剤の併用は、
薬剤の組み合わせにより、禁忌であったり、併用注意であったりする。
NSAIDsのフルルビプロフェン経口剤(フロベン),
フルルビプロフェンアキセチル注射剤(ロピオン),
エスフルルビプロフェン・ハッカ油経皮吸収製剤(ロコアテープ)は、
ニューキノロン系抗菌薬のノルフロキサシン,ロメフロキサシン,プルリフロキサシン,エノキサシン水和物との併用は禁忌とされている。
アセトアミノフェンはNSAIDsではないため、
上記のようなニューキノロン系抗菌剤との相互作用はない。
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