ボリコナゾールの薬物相互作用 108回薬剤師国家試験問268−269

108回薬剤師国家試験 問268−269
30歳男性。身長165cm、体重55kg。
急性骨髄性白血病のため6ヶ月前に父親をドナーとして同種造血幹細胞移植を受け、
術後1ヶ月で退院した。
慢性移植片対宿主病(GVHD)のコントロール目的に以下の薬剤を継続服用している。

 

108回薬剤師国家試験問268−269 ボリコナゾールとタクロリムスの相互作用

 

問268(薬剤)
処方された薬剤の使用に際し、
考慮すべき薬物相互作用の発現機序として最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 小腸P-糖タンパク質に対する競合阻害
2 CYP2C19に対する競合阻害
3 ヘム鉄への配位結合によるCYP3A4の阻害
4 核内受容体を介したCYP1A2の誘導
5 核内受容体を介したCYP3A4の誘導

 

問269(実務)
今回、予定されていた検査のために入院し、精査した結果、
感染の心配が少なくなったためボリコナゾール錠を中止すると、
医師から病棟担当薬剤師に連絡があった。
薬剤師が医師へ提案する内容として最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。

 

1 プレドニゾロンの用量を減量する。
2 プレドニゾロンの血中濃度を頻回に測定し、投与量を調節する。
3 プレドニゾロン錠5mg 1日6錠からヒドロコルチゾン錠10mg 1日3錠に変更する。
4 タクロリムスの用量を1日2カプセルに減量する。
5 タクロリムスの血中濃度を頻回に測定し、投与量を調節する。

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108回薬剤師国家試験 問268−269 解答解説

 

108回薬剤師国家試験問268−269 ボリコナゾールとタクロリムスの相互作用

 

処方された薬剤の使用に際し、
考慮すべき薬物相互作用の発現機序として最も適切なのは、
選択肢3の「ヘム鉄への配位結合によるCYP3A4の阻害」である。

 

構造中にイミダゾール環やトリアゾール環などの含窒素複素環を有する化合物は、
複素環の窒素原子がCYPのヘム鉄に配位結合することにより、
CYPによる代謝を阻害する。
この機構によるCYPの阻害は、可逆的な阻害だと考えられている。
ボリコナゾール(ブイフェンド)は、トリアゾール系抗真菌薬であり、
構造中にトリアゾール環を有し、
CYP2C9,CYP 2C19,CYP 3A4の阻害作用を有する。
特に、CYP3A4に対する阻害作用は強い。

 

108回薬剤師国家試験問268−269 ボリコナゾールとタクロリムスの相互作用

 

 

タクロリムス(プログラフ,グラセプター)は、
主としてCYP3A4及びCYP3A5で代謝されて消失する。
タクロリムスとボリコナゾールを併用すると、
ボリコナゾールによりCYP3A4が阻害され、
タクロリムスの血中濃度が上昇し、
腎障害、不整脈等の副作用が発現するおそれがある。

 

よって、タクロリムスとボリコナゾールを併用する場合は、
患者の状態を十分に観察するとともに、本剤血中濃度のモニターを行い、
必要に応じ減量・休薬等の処置を行う。

 

108回薬剤師国家試験問268−269 ボリコナゾールとタクロリムスの相互作用

 

 

108回薬剤師国家試験 問269(実務) 解答解説

 

ボリコナゾール錠を中止するにあたり、
薬剤師が医師へ提案する内容として最も適切なのは、
選択肢5の「タクロリムスの血中濃度を頻回に測定し、投与量を調節する」である。

 

タクロリムスとボリコナゾールの併用時は、
ボリコナゾールのCYP3A4阻害作用により、
タクロリムスの代謝が低下していた。
ボリコナゾールを中止すると、
タクロリムスとボリコナゾールの併用時に比べ、
タクロリムスの代謝が上昇するため、
タクロリムスの血中濃度が低くなると考えられる。
よって、ボリコナゾール錠を中止するにあたり、
タクロリムスの血中濃度を頻回に測定し、投与量を調節する必要がある。

 

 

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