薬物代謝酵素の遺伝子多型に関する記述 103回薬剤師国家試験問194
103回薬剤師国家試験 問194
薬物代謝酵素の遺伝子多型に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 CYP2C19のpoor metabolizer(PM)では、オメプラゾール併用のピロリ菌除菌療法の効果が減弱する。
2 CYP2D6のextensive metabolizer(EM)では、コデインの鎮痛効果が減弱する。
3 CYP2C9のPMでは、フェニトインによる中枢毒性発現のリスクが増大する。
4 N−アセチル転移酵素2(NAT2)のslow acetylator(SA)では、イソニアジドによる副作用のリスクが増大する。
5 CYP2C19のPMの頻度は欧米人では5〜10%であるが、日本人では約1%である。
103回薬剤師国家試験 問194 解答解説
遺伝子多型による薬物代謝酵素活性の高低は、以下のように分類される。
・酵素活性の正常なヒト:extensive metabolizer (EM),
・遺伝子多型により酵素活性の著しく低いヒト:poor metabolizer(PM),
・遺伝子多型によりEMより酵素活性は低いが、低下の割合が低いヒト:intermediate metabolizer(IM),
・遺伝子多型により酵素活性の著しく高いヒト:ultra−rapid metabolizer(UM)
◆ 1,5について
1 × CYP2C19のpoor metabolizer(PM)では、オメプラゾール併用のピロリ菌除菌療法の効果が減弱する。
→ 〇 CYP2C19のpoor metabolizer(PM)では、オメプラゾール併用のピロリ菌除菌療法の効果が増強する。
5 × CYP2C19のPMの頻度は欧米人では5〜10%であるが、日本人では約1%である。
→ 〇 CYP2C19のPMの頻度は欧米人では2〜5%であるが、日本人では約20%である。
オメプラゾール,ランソプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬は、
主にCYP2C19で代謝されて不活化される。
よって、CYP2C19のPMでは、オメプラゾールの代謝が低下して薬効が増強し、
CYP2C19のUMでは、オメプラゾールの代謝が増大して薬効が減弱する。
CYP2C19のPMの頻度は欧米人では5〜10%であるが、日本人では約20%であり、
日本人の方が欧米人よりもCYP2C19のPMの割合が高い。
◆ 2について
2 × CYP2D6のextensive metabolizer(EM)では、コデインの鎮痛効果が減弱する。
コデインは、CYP2D6で代謝されると、
活性代謝物であるモルヒネとなる。
よって、CYP2D6のEMでは、コデインの代謝は正常なので、
鎮痛効果は減弱しないと考えられる。
なお、CYP2D6のPMではコデイン投与による鎮痛効果は減弱し、
CYP2D6のUMではコデイン投与による鎮痛効果は増強すると考えられる。
◆ 3について
3 ○ CYP2C9のPMでは、フェニトインによる中枢毒性発現のリスクが増大する。
フェニトイン(アレビアチン)は、CYP2C9で代謝されて不活化する。
よって、CYP2C9のPMでは、フェニトインの未変化体の血中濃度が上昇し、
中枢毒性などの副作用発現のリスクが増大する。
◆ 4について
4 ○ N−アセチル転移酵素2(NAT2)のslow acetylator(SA)では、イソニアジドによる副作用のリスクが増大する。
イソニアジドは、主にN−アセチル転移酵素(NAT2)によりアセチル化され、不活化する。
NAT2には遺伝子多型が存在し、
アセチル化反応速度が速い群をrapid acetylator(RA)と呼び、
アセチル化反応速度が遅い群をslow acetylator(SA)と呼ぶ。
イソニアジドのSAでは、未変化体の血中濃度が上昇し、
副作用のリスクが増大する。
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