ワルファリンの代謝と遺伝子多型の検査・イトラコナゾールと抗凝固薬の併用 105回薬剤師国家試験問272,273

105回薬剤師国家試験 問272−273
54歳女性。152cm、48kg。高血圧、脂質異常症、深在性皮膚真菌症の治療のため処方1と処方2の薬剤を服用していた。その後、深部静脈血栓塞栓症を発症し、その治療のため処方3が追加となった。

 

105回薬剤師国家試験問272,273 ワルファリン代謝と遺伝子多型の検査

 

PT−INR を治療目標域に到達させるため、ワルファリン投与量の調節を試みたが、PT−INR が3.0〜6.0で推移し、コントロールが困難であった。医師は患者や薬剤師と相談し、薬物動態関連遺伝子の多型を検査することにした。

 

問272(薬剤)
多型を検査すべき遺伝子として、適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 CYP2C9
2 CYP2C19
3 CYP2D6
4 UGT1A1
5 NAT2

 

問273(実務)
遺伝子多型検査の結果、ホモの変異を有することが判明し、医師は代替薬について薬剤師に相談した。医師に提案すべき抗血栓薬として最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 アピキサバン錠
2 シロスタゾール錠
3 ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセル
4 チクロピジン塩酸塩錠
5 リバーロキサバン錠

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題 代謝 一覧へ

 

 

105回薬剤師国家試験 問272(薬剤) 解答解説

 

105回薬剤師国家試験問272,273 ワルファリン代謝と遺伝子多型の検査

 

多型を検査すべき遺伝子として、適切なのは、
選択肢1のCYP2C9である。

 

PT−INR が3.0〜6.0で推移していることから、
ワルファリンの代謝酵素の活性が低いため、
血中濃度が高くなっていることが考えられる。

 

ワルファリンは、光学異性体が存在し、
S−ワルファリンはR−ワーファリンの約5倍の抗凝固活性を示す。
S−ワルファリンは主にCYP2C9による代謝で消失し、
R−ワルファリンはCYP1A2やCYP3A4などによる代謝で消失する。
よって、CYP2C9の遺伝子多型により、
酵素活性が著しく低い場合、ワルファリンの血中濃度は高くなり、薬効は増強する。

 

以上より、本患者では、CYP2C9の遺伝子を検査すべきである。

 

 

105回薬剤師国家試験 問273(実務) 解答解説

 

ワルファリンの代替薬として、
医師に提案すべき抗血栓薬として最も適切なのは、
選択肢1のアピキサバン錠である。

 

選択肢の薬のうち、抗凝固薬は、
1のアピキサバン(エリキュース),
3のダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(プラザキサ),
5のリバーロキサバン(イグザレルト)である。

 

2のシロスタゾール(プレタール)と
4のチクロピジン塩酸塩(パナルジン)は、
抗血小板薬であるので、薬効から代替薬にはならない。

 

処方薬のうち、イトラコナゾール(イトリゾール)は、
CYP及びP糖蛋白に対して阻害作用を示す。
CYPの阻害は、特にCYP3A4に対する阻害作用が強い。
併用による相互作用が問題となり、併用禁忌とされている薬剤がある。

 

ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩は、
P-糖タンパク質により排出される。
イトラコナゾールのP糖蛋白阻害作用により、ダビガトランの排泄が阻害され、
血中濃度が上昇し、出血の危険性が増大することがある。
そのため、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩は、
イトラコナゾールと併用禁忌となっている。

 

リバーロキサバンは、主にCYP3A4及びCYP2J2によって代謝される。
また、リバーロキサバンは、P-糖蛋白及び乳癌耐性蛋白(BCRP)により排出される。
イトラコナゾールのCYP3A4阻害作用及びP糖蛋白阻害作用により、
リバーロキサバンの代謝及び排泄が阻害され、血中濃度が上昇し、
出血の危険性が増大するおそれがある。
そのため、リバーロキサバンは、
イトラコナゾールと併用禁忌となっている。

 

アピキサバンは、主にCYP3A4/5によって代謝される。
また、アピキサバンはP-糖蛋白及び乳癌耐性蛋白(BCRP)により排出される。
よって、イトラコナゾールのCYP3A4阻害作用及びP糖蛋白阻害作用により、
アピキサバンの代謝及び排泄が阻害され、血中濃度が上昇するおそれがある。
そのため、アピキサバンは、イトラコナゾールと併用注意だが、併用禁忌ではない。

 

なお、選択肢にはないが、
抗凝固薬のエドキサバン(リクシアナ)について、
P-糖タンパク質により排出され、
イトラコナゾールのP-糖蛋白阻害作用により、エドキサバンの排泄が阻害され、
血中濃度が上昇するおそれがある。
そのため、エドキサバン、
イトラコナゾールと併用注意だが、併用禁忌ではない。

 

また、ワルファリンとイトラコナゾールの併用について、
イトラコナゾールのCYP阻害作用により、
ワルファリンの代謝が阻害され、ワルファリンの作用が増強するおそれがある。
そのため、ワルファリンは、イトラコナゾールと併用注意だが、併用禁忌ではない。
ただし、併用する場合は、プロトロンビン時間測定及びトロンボテストの回数を増やし、必要に応じてワルファリンの投与量を減量するなど用量に注意することとされている。

 

関連問題
遺伝子多型がワルファリンの薬効に最も影響する代謝酵素 97回問69

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
105回問272,273(e-RECさん)

トップへ戻る