ワルファリンとカペシタビンの相互作用 106回薬剤師国家試験問270−271
106回薬剤師国家試験 問270−271
64歳男性。心筋梗塞、慢性胃炎。5年前に心筋梗塞を発症して以来、以下の処方薬を継続的に服用している。最近、血便が頻回に認められたため受診し、内視鏡検査を受けたところ大腸がんと診断され、摘出手術を受けた。明日からXELOX療法(ゼロックス療法)※を実施する予定である。
問270(実務)
外来化学療法室の薬剤師の対応として適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 カペシタビンの吸収に影響するので、高脂肪食を避けるよう、患者に指導する。
2 ファモチジン錠をシメチジン錠に変更するよう、医師に処方提案する。
3 血中カルシウム濃度を測定し、低カルシウム血症の有無を確認するよう、医師に提案する。
4 ワルファリンによる出血リスクが上昇するので、注意すべき自覚症状について患者に指導する。
5 手足症候群の発現に注意するよう、患者に指導する。
問271(薬剤)
前問の対応の1つについて、その原因となる、XELOX療法に伴う生理学的あるいは薬物動態学的な変化はどれか。1つ選びなさい。
1 胃内容排出時間の延長
2 アルブミン濃度の低下
3 CYP3A4の誘導
4 CYP2C9の阻害
5 腎血漿流量の低下
106回薬剤師国家試験 問270−271 解答解説
問270について
外来化学療法室の薬剤師の対応として適切なのは、
選択肢4の「ワルファリンによる出血リスクが上昇するので、注意すべき自覚症状について患者に指導する」と、
選択肢5の「手足症候群の発現に注意するよう、患者に指導する」である。
問271について
前問の対応の1つについて、その原因となる、XELOX療法に伴う生理学的あるいは薬物動態学的な変化は、
選択肢4のCYP2C9の阻害である。
カペシタビン(ゼローダ)とワルファリンとの併用により、血液凝固能検査値異常,出血が発現し、死亡に至った例も報告されている。
この相互作用は、S−ワルファリンの主な代謝酵素であるCYP2C9が、カペシタビンにより阻害され、S−ワルファリンの血中濃度が上昇したことによる。
カペシタビンがCYP2C9の酵素蛋白合成系に影響し、酵素活性が低下している可能性が考えられている。
カペシタビンの手足症候群について、
手足症候群とは、抗がん剤の使用により、手足の皮膚や爪の細胞が障害され、手足の感覚の異常,手足の皮膚の異常,爪の異常が現れる副作用である。
具体的な症状は以下の通り。
● 手や足の感覚の異常
「しびれ」「チクチク、ピリピリした痛み」、「痛みに敏感」
「熱い砂の上を歩いているか、靴の中に砂利があるかのような感覚」
● 手や足の皮膚の変化
「赤み(発赤、紅斑)」「むくみ」「色素沈着」
「カサカサする乾燥」「角化(皮膚表面が硬く、厚くなってガサガサする状態)」「ひびわれ」「水ぶくれ(水ほう)」
「落屑(剥がれ落ちる)」「指紋が無くなる」
● 爪の変形
「変形」「色素沈着」「うすくなる」「割れる」
手足症候群は、原因薬剤を減量・休薬すれば改善する。
原因薬剤を減量せずに続ける場合、症状の軽いうちに対処すれば良くなるが、
放置すると症状が悪化し、重症化すると、減量・休薬しても症状の消失・軽快に長期間を要する。
よって、手足症候群の原因となる薬剤を服用中は、手足の感覚,皮膚・爪の状態を注意深く観察し、症状悪化の前に休薬等の適切な処置をする必要がある。
手足症候群の予防や症状改善のために、
外用剤の使用などによる手足の保湿が推奨される。
問270の選択肢2の「ファモチジン錠をシメチジン錠に変更するよう、医師に処方提案する」について、
シメチジン(タガメット)はCYPを阻害し、ワルファリンの血中濃度を上昇させる。
ファモチジン(ガスター)は、ワルファリン,カペシタビンとの相互作用は報告されていないため、
ファモチジンをシメチジンに変更する必要はない。
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XELOX療法で相互作用に注意する薬物 108回問208,209
★ 他サイトさんの解説リンク
106回問270,271(e-RECさん)