薬物間相互作用 104回薬剤師国家試験問167

104回薬剤師国家試験 問167
薬物相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 アロプリノールはキサンチンオキシダーゼによるメルカプトプリンの代謝を阻害するため、メルカプトプリンの毒性が増強される。
2 リファンピシンは主にCYP2D6を誘導するため、トリアゾラムの血中濃度を低下させる。
3 シスプラチンは有機カチオントランスポーターOCT2の基質であるため、ジゴキシンの尿細管分泌を競合的に阻害する。
4 エリスロマイシンは主にCYP3A4の代謝活性を阻害するため、カルバマゼピンの血中濃度を上昇させる。
5 アセトアミノフェンはノルフロキサシンによるγ−アミノ酪酸GABAA受容体結合阻害作用を増強し、痙れんを誘発する。

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104回薬剤師国家試験 問167 解答解説

 

◆ 1について
1 ○ アロプリノールはキサンチンオキシダーゼによるメルカプトプリンの代謝を阻害するため、メルカプトプリンの毒性が増強される。

 

メルカプトプリンの消失経路として、
キサンチンオキシダーゼにより酸化され、
チオ尿酸に代謝されて排泄されることが挙げられる。

 

アロプリノールは、代謝においてヒポキサンチン及びキサンチンと拮抗し、
キサンチンオキシダーゼを競合的に阻害する薬剤である。

 

よって、メルカプトプリン(ロイケリン)、または、
メルカプトプリンのプロドラッグのアザチオプリン(イムラン,アザニン)は、
アロプリノール(ザイロリック)との併用で、
メルカプトプリンの代謝が抑制されて血中濃度が上昇し、
骨髄抑制などの副作用のリスクが上昇する。
そのため、メルカプトプリン・アザチオプリンと、
アロプリノールを併用する場合は、
メルカプトプリン・アザチオプリンの用量を1/3〜1/4に減量することとされている。

 

関連問題
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◆ 2について
2 × リファンピシンは主にCYP2D6を誘導するため、トリアゾラムの血中濃度を低下させる。
→ ○ リファンピシンはCYP3A4を誘導するため、トリアゾラムの血中濃度を低下させる。

 

リファンピシンは、CYPやUDP-グルクロン酸転移酵素などの薬物代謝酵素の誘導作用、薬物排出トランスポーターのP-糖タンパク質の誘導作用を有している。
また、リファンピシンは、有機アニオントランスポーターのOATP1B1,OATP1B3を阻害する作用も有している。
トリアゾラム(ハルシオン)は、主にCYP3A4で代謝されて消失する。
トリアゾラムとリファンピシンを併用すると、
リファンピシンのCYP3A4誘導作用により、
トリアゾラムの血中濃度が低下する。
そのため、リファンピシンとトリアゾラムは、
併用注意となっている。

 

104回薬剤師国家試験問167 薬物相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか

 

 

◆ 3について
3 × シスプラチンは有機カチオントランスポーターOCT2の基質であるため、ジゴキシンの尿細管分泌を競合的に阻害する。

 

有機カチオントランスポーターOCT2は、
腎臓の近位尿細管上皮細胞の血管側に存在し、
促進拡散により血液中の有機カチオン物質を細胞内に取り込むトランスポーターである。
シスプラチンはOCT2の基質である。
ジゴキシンは、P糖タンパク質の基質であるが、
OCT2の基質ではないため、
シスプラチンにより尿細管分泌が競合的に阻害されることはない。

 

 

◆ 4について
4 ○ エリスロマイシンは主にCYP3A4の代謝活性を阻害するため、カルバマゼピンの血中濃度を上昇させる。

 

エリスロマイシンは、14員環マクロライド系抗生物質であり、
代謝物または代謝中間体がCYPのヘム鉄と共有結合を形成し、
安定な複合体となることでCYPの活性を阻害する。
この機構によるCYPの阻害は、不可逆的な阻害である。
カルバマゼピン(テグレトール)は、主にCYP3A4で代謝される。
カルバマゼピンとエリスロマイシンを併用すると、
エリスロマイシンのCYP3A4阻害作用により、
カルバマゼピンの血中濃度が上昇する。

 

なお、カルバマゼピンのCYP3A4の代謝物のカルバマゼピンエポキシドは、
薬理活性を有すると考えられている。
カルバマゼピンエポキシドは、エポキシド加水分解酵素により、
ジオール体に代謝され不活化される。

 

 

◆ 5について
5 × アセトアミノフェンはノルフロキサシンによるγ−アミノ酪酸GABAA受容体結合阻害作用を増強し、痙れんを誘発する。

 

ニューキノロン系抗菌剤と非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)を併用すると、
ニューキノロン系抗菌剤のGABAA阻害作用が非ステロイド性消炎鎮痛剤により増強され、痙攣を起こすことがある。
そのため、ニューキノロン系抗菌剤と非ステロイド性消炎鎮痛剤の併用は、
薬剤の組み合わせにより、禁忌であったり、併用注意であったりする。

 

アセトアミノフェンはNSAIDではないため、
上記のようなニューキノロン系抗菌剤との相互作用はない。

 

関連問題
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