グレープフルーツジュースの薬物相互作用の機序 104回薬剤師国家試験問270−271

104回薬剤師国家試験 問270−271
60歳男性。高血圧の治療のため、内科から以下の薬剤が処方され服用していた。最近、薬剤の服用後にめまいやふらつきを感じることがあり薬局を訪れた。

 

104回薬剤師国家試験問270−271 グレープフルーツジュースのCYP阻害の機序

 

問270(実務)
薬剤師がこの患者に聞き取りを行ったところ、
最近、夜にグレープフルーツジュースを飲むようになったとのことであった。
薬剤師の対応として適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 今晩からグレープフルーツジュースの摂取を中止するように指導した。
2 明日からは、ニソルジピンの服用は中止するように指導した。
3 患者がグレープフルーツジュースを飲んでいることを医師に伝え、患者には受診するように指導した。
4 医師に、べニジピン塩酸塩錠への変更を提案した。

 

問271(薬剤)
この患者におけるグレープフルーツジュース中の原因物質とニソルジピンの相互作用について、発現機序と考えられるのはどれか。1つ選びなさい。
1 小腸CYP3A4に対する競合阻害
2 小腸CYP3A4に対する共有結合による不可逆的阻害
3 肝臓CYP3A4に対する競合阻害
4 核内受容体を介した小腸CYP3A4の誘導
5 小腸P-糖タンパク質に対する競合阻害

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104回薬剤師国家試験 問270−271 解答解説

 

104回薬剤師国家試験問270−271 グレープフルーツジュースのCYP阻害の機序

 

問270について
薬剤師の対応として適切なのは、
選択肢1の「今晩からグレープフルーツジュースの摂取を中止するように指導した」と、
選択肢3の「患者がグレープフルーツジュースを飲んでいることを医師に伝え、患者には受診するように指導した」である。

 

問271について
この患者におけるグレープフルーツジュース中の原因物質とニソルジピンの相互作用について、発現機序と考えられるのは、選択肢2の「小腸CYP3A4に対する共有結合による不可逆的阻害」である。

 

グレープフルーツジュースに含まれるフラノクマリン系化合物は、小腸のCYP3A4を不可逆的に阻害する。
これは、フラノクマリン系化合物の代謝物または代謝中間体が、小腸のCYP3A4のヘム鉄と共有結合を形成し、
安定な複合体となることでCYP3A4の活性を阻害する。
この機構によるCYPの阻害は、不可逆的な阻害であり、
新しいCYPが合成されるまで阻害が続くと考えられている。

 

ジヒドロピリジン系カルシウムブロッカーのニソルジピン(バイミカード)は、
主にCYP3A4で代謝されて不活化するため、
グレープフルーツジュースを摂取すると、小腸のCYP3A4が不可逆的に阻害され、
ニソルジピンの血中濃度が上昇し、作用が増強されるおそれがある。
よって、ニソルジピンとグレープフルーツジュースは併用注意となっており、併用した場合は患者の状態を注意深く観察し,過度の血圧低下等の症状が認められた場合,ニソルジピンを減量するなど適切な処置を行う必要がある。
また,グレープフルーツジュースを常飲している場合,
飲用中止4日目からニソルジピンを投与することが望ましいとされる。

 

 

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