薬物間相互作用 103回薬剤師国家試験問171
103回薬剤師国家試験 問171
経口投与時において、薬物Aの体内動態に薬物Bの併用が及ぼす影響として正しいのはどれか。2つ選びなさい。
103回薬剤師国家試験 問171 解答解説
経口投与時において、薬物Aの体内動態に薬物Bの併用が及ぼす影響として正しいのは、
選択肢1と4である。
◆ 1:ノルフロキサシンとスクラルファート水和物の相互作用
ノルフロキサシンとスクラルファートを併用すると、
消化管内で難溶性キレートを形成し、ノルフロキサシンの吸収が低下する。
ノルフロキサシン(バクシダール)は、ニューキノロン系抗菌薬である。
スクラルファート(アルサルミン)は、アルミニウムを含有する薬物であり、
胃や十二指腸の粘膜で炎症・潰瘍が生じている病変部に選択的に結合し、保護したり治癒を促進する。
ニューキノロン系抗菌薬は、2価,3価の金属イオンと難溶性のキレートを形成し、
吸収が低下することが知られている。
よって、ノルフロキサシンとスクラルファートを併用すると、
消化管内で難溶性キレートを形成し、ノルフロキサシンの吸収が低下する。
ニューキノロン系抗菌薬を服用中、カルシウム,マグネシウム,アルミニウム,鉄などの金属を多く含む薬物や食物を摂取する場合は、両者を2時間以上あける必要がある。
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◆ 2:イトラコナゾールとオメプラールの相互作用
イトラコナゾールとオメプラールを併用すると、
オメプラールの酸分泌抑制作用により、胃内pHが上昇し、
イトラコナゾールの溶解性が低下し、吸収が低下する。
イトラコナゾールは難溶性,かつ,弱塩基性薬物であるため、
プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカー,制酸剤を併用し、
胃内のpHが上昇すると、溶解度が低下し、消化管吸収が低下する。
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◆ 3:アセトアミノフェンとメトクロプラミドの相互作用
アセトアミノフェンとメトクロプラミドを併用すると、
メトクロプラミドにより胃内排出速度が上昇し、
アセトアミノフェンの吸収速度が上昇する。
アセトアミノフェンは、小腸で単純拡散により吸収される。
メトクロプラミド(プリンペラン)は、消化管運動を促進させ、
胃内容排出速度を上昇させる。
単純拡散により小腸で吸収される薬物は、
メトクロプラミド等の併用により胃内容排出速度が上昇すると、
吸収速度が上昇する。
◆ 4:メルカプトプリン水和物とフェブキソスタットの相互作用
フェブキソスタットは6−メルカプトプリンの代謝を阻害する。
6−メルカプトプリンの消失経路として、
キサンチンオキシダーゼにより酸化され、
6−チオ尿酸に代謝されて排泄されることが挙げられる。
よって、6−メルカプトプリン(ロイケリン)、または、
6−メルカプトプリンのプロドラッグのアザチオプリン(イムラン,アザニン)は、
フェブキソスタット等のキサンチンオキシダーゼを阻害する薬物との併用で、
6−メルカプトプリンの代謝が抑制されて血中濃度が上昇し、
骨髄抑制などの副作用のリスクが上昇する。
このことから、6−メルカプトプリン(ロイケリン)、または、
アザチオプリン(イムラン,アザニン)は、
フェブキソスタット(フェブリク)と併用禁忌となっている。
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◆ 5:ピタバスタチンカルシウムとシクロスポリンの相互作用
シクロスポリンは、有機アニオントランスポーターOATP1B1を阻害するため、
ピタバスタチンの肝実質細胞への取り込みを阻害する。
有機アニオントランスポーターOATP1B1は、
肝実質細胞の血管側に存在し、血液中の有機アニオン性物質の肝実質細胞内への取り込みに関与する。
シクロスポリン(ネオーラル,サンディミュン)は、
CYP3A4の阻害,P糖タンパク質の阻害, OATP1B1やOATP1B3等の有機アニオントランスポーターの阻害,BCRPの阻害など、多くの薬物相互作用が報告されている。
ピタバスタチン(リバロ)は、OATP1B1により、
血中から肝実質細胞内へ取り込まれ、その後、胆汁中に排泄されると考えられている。
よって、シクロスポリンとピタバスタチンを併用すると、
シクロスポリンはOATP1B1を阻害するため、
ピタバスタチンの肝実質細胞内への移行を抑制し、
血中濃度を上昇させると考えられる。
このことから、ピタバスタチン(リバロ)と
シクロスポリン(ネオーラル,サンディミュン)は併用禁忌となっている。
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