アシクロビルのプロドラッグであるバラシクロビル 100回薬剤師国家試験問282−283
100回薬剤師国家試験 問282−283
75歳男性。2日前から腹部に痛みを伴う赤い発疹が認められた。この発疹は小さな水ぶくれとなり帯状に広がり、激しい痛みとなった。近医を受診し、帯状疱疹と診断され、病院に入院となり、以下の薬剤が処方された。
問282(実務)
上記の処方に対し、病棟薬剤師が注意すべき内容として、最も優先順位が低いのはどれか。1つ選びなさい。
1 バラシクロビルによる精神神経症状の発現
2 肝機能障害時におけるバラシクロビルの用量調節
3 ナプロキセンによる消化性潰瘍の発生
4 ナプロキセンによる気管支ぜん息の誘発
5 ナプロキセンによる浮腫及び高血圧の発現
問283(薬剤)
アシクロビルのプロドラッグであるバラシクロビルに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 アシクロビルにエチレングリコールを結合させた化合物で、体内吸収後の血中滞留性はアシクロビルより優れている。
2 主に肝臓のエステラーゼで加水分解されてアシクロビルに変換される。
3 経口投与後のアシクロビルとしてのバイオアベイラビリティは、消化管からの吸収率が高まるため、アシクロビル経口投与時のそれより高くなる。
4 経口投与後のアシクロビルとしてのバイオアベイラビリティは、肝臓での代謝を回避できるため、アシクロビル経口投与時のそれより高くなる。
100回薬剤師国家試験 問282(実務) 解答解説
上記の処方に対し、病棟薬剤師が注意すべき内容として、
最も優先順位が低いのは、
選択肢2の「肝機能障害時におけるバラシクロビルの用量調節」である。
バラシクロビルの用量調節が必要なのは、
肝機能障害時ではなく、腎機能障害時である。
バラシクロビル(バルトレックス)は、抗ヘルペスウイルス薬であり、
成人の帯状疱疹には、皮疹出現後5日以内に投与を開始し、
通常1回1000mg、1日3回、7日間投与する。
バラシクロビルの主な消失経路は尿中排泄のため、腎機能障害時では、
クレアチニンクリアランスに応じた投与間隔及び投与量の調節が必要である。
以下、他の選択肢について
◆ 1について
1 バラシクロビルによる精神神経症状の発現
バラシクロビルの重大な副作用の1つに精神神経症状があり、
意識障害(昏睡)、せん妄、妄想、幻覚、錯乱、痙攣、てんかん発作、麻痺、脳症等があらわれることがある。
一般に、これらの精神神経症状は、バラシクロビルの投与中止により回復する。
◆ 3,4,5について
3 ナプロキセンによる消化性潰瘍の発生
4 ナプロキセンによる気管支ぜん息の誘発
5 ナプロキセンによる浮腫及び高血圧の発現
ナプロキセン(ナイキサン)は、フェニルプロピオン酸系の非ステロイド性抗炎症薬であり、
選択肢3,4,5は、非ステロイド性抗炎症薬に共通して注意が必要な副作用である。
選択肢5の「ナプロキセンによる浮腫及び高血圧の発現」について、
プロスタグランジンは腎血流量及び水・電解質代謝の調節作用を有し、
非ステロイド性抗炎症薬はプロスタグランジンの生合成を阻害することから、
腎血流量の低下,および,Na・水分貯留傾向が現れる。
このことから、腎障害,浮腫,高血圧,心機能の低下を起こすおそれがある。
100回薬剤師国家試験 問283(薬剤) 解答解説
アシクロビルのプロドラッグであるバラシクロビルに関する記述のうち、
正しいのは、選択肢2と3である。
1 × アシクロビルにエチレングリコールを結合させた化合物で、体内吸収後の血中滞留性はアシクロビルより優れている。
2 ○ 主に肝臓のエステラーゼで加水分解されてアシクロビルに変換される。
3 ○ 経口投与後のアシクロビルとしてのバイオアベイラビリティは、消化管からの吸収率が高まるため、アシクロビル経口投与時のそれより高くなる。
4 × 経口投与後のアシクロビルとしてのバイオアベイラビリティは、肝臓での代謝を回避できるため、アシクロビル経口投与時のそれより高くなる。
バラシクロビル(バルトレックス)は、アシクロビルとL-バリンがエステル結合した化合物で、経口投与で消化管から吸収された後、主に肝臓のエステラーゼによりエステル結合が加水分解されてアシクロビルとなるプロドラッグである。
バラシクロビルはバリンエステルのプロドラッグとすることにより、消化管からの吸収において小腸のペプチドトランスポーターに認識されるようになり、アシクロビルと比較して経口吸収性が増大している。
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