ヒトイソフェンインスリン水性懸濁注射液 101回薬剤師国家試験問276,277
101回薬剤師国家試験 問276−277
50歳女性。2型糖尿病と診断され内服薬で治療を行っていたが、血糖コントロール不良のため、インスリン導入目的で入院となり、以下の薬剤をペン型注入器を用いて投与することとなった。
問276(実務)
薬剤師が患者に指導する内容として、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 十分に混和し、均一にしてから使用してください。
2 注射を忘れた場合は、次回2倍量を注射してください。
3 注入ボタンを押したら速やかに針を抜いてください。
4 腹部、大腿部、上腕部などの投与部位を決め、その中で注射場所を毎回変えてください。
問277(薬剤)
下図は、今回処方された注射剤(ヒトイソフェンインスリン水性懸濁注射液)とインスリンヒト注射液を、それぞれヒトの皮下に投与した後のインスリン血中濃度推移を示している。処方された注射剤に該当する血中濃度推移と、この製剤の特徴に関する記述の組合せのうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。なお、処方された注射剤には、添加剤としてプロタミン硫酸塩が含まれている。
101回薬剤師国家試験 問276(実務) 解答解説
◆ 1について
1 〇 十分に混和し、均一にしてから使用してください。
本剤は懸濁製剤なので、
十分混和し均一にしてから使用する。
◆ 2について
2 × 注射を忘れた場合は、次回2倍量を注射してください。
1度に2回分を注射してはいけない。
注射し忘れた場合は医師に相談する。
◆ 3について
3 × 注入ボタンを押したら速やかに針を抜いてください。
注入ボタンを押したまま6秒以上保持し、
注入ボタンを押したまま針を抜く。
◆ 4について
4 〇 腹部、大腿部、上腕部などの投与部位を決め、その中で注射場所を毎回変えてください。
インスリンの自己注射は、上腕、大腿、腹部、臀部等に皮下注射する。
投与部位により吸収速度が異なるので部位を決め、その中で注射箇所を毎回変えること。前回の注射箇所より2〜3cm離して注射すること。
例えば、注射部位を腹部と決めたら毎回腹部に打つが、前回打った箇所から2〜3cm離して打つ。
前回の注射箇所から2〜3cm離す理由は、同一箇所への繰り返し投与により、皮膚アミロイドーシス又はリポジストロフィーを引き起こすことがあるためである。これらの病変が起こった場合、皮膚の腫瘤や硬結を認め、インスリンの吸収が妨げられることがある。
また、お腹に注射する場合は、おへそから5cmは離す。その理由は、おへそ近辺の皮膚は線維組織が多く、インスリンの吸収のばらつきが大きいためである。
101回薬剤師国家試験 問277(薬剤) 解答解説
正解は6である。
ヒトイソフェンインスリンとは、ヒトインスリンにプロタミン硫酸塩を添加した製剤であり、中間型インスリン(Neutral Protamine Hagedorn インスリン)と呼ばれる。
中間型インスリン(NPHインスリン)では、プロタミン硫酸塩がヒトインスリンと溶解性の低い複合体を形成するため、ノーマルなヒトインスリン製剤に比べ、血中濃度のピークは緩やかだが効果が長時間持続する。
中間型インスリンは主に基礎分泌(Basal)を補う目的で投与される。
よって、イのグラフがヒトイソフェンインスリン水性懸濁注射液の血中濃度推移であると考えられる。
ノーマルなヒトインスリン製剤はレギュラーインスリン(速効型インスリン)と呼ばれ、
主に追加分泌(Bolus)を補う目的で投与される。
よって、アのグラフがインスリンヒト注射液の血中濃度推移であると考えられる。
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