アドエアエアゾール 98回薬剤師国家試験問284,285
98回薬剤師国家試験 問284−285
47歳男性。気管支ぜん息の治療中である。この患者に以下の薬剤が新たに処方された。
問284(実務)
この患者に対する服薬指導の内容として、適切でないのはどれか。1つ選びなさい。
1 ぜん息発作重積状態の時に使用してもよい。
2 用時振とうして使用すること。
3 吸入ステロイド薬単独使用時と比べ、ステロイド薬の減量が可能である。
4 発作が起こらなくても毎日定期的に使用する。
5 薬剤噴霧と吸入のタイミングを同調できない時には、スペーサーの使用を勧める。
問285(薬剤)
この薬剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 全身作用を目的とした吸入エアゾール剤である。
2 肺深部まで薬物を送達させるために、エアゾール粒子の空気力学径が30〜100μmの大きさに設計されている。
3 速く吸入する方が吸入効率がよい。
4 吸入後に息を止める必要はない。
5 容器は、密封容器である。
98回薬剤師国家試験 問284(実務) 解答解説
◆ 1について
1 × ぜん息発作重積状態の時に使用してもよい。
アドエア125エアゾールは、
吸入ステロイド(inhaled corticosteroid:ICS)と
長時間作用型β2刺激薬(longacting β2agonists:LABA)の配合剤であるが、
本剤は喘息発作の予防を目的とした長期管理薬(コントローラー)であり、
発現している喘息発作を治療する薬ではない。
アドエアエアゾールの添付文書の効能又は効果に関連する注意の項に下記の記載がある。
・本剤は発現した発作を速やかに軽減する薬剤ではないので、急性の発作に対しては使用しないこと。
・本剤の投与開始前には、患者の喘息症状を比較的安定な状態にしておくこと。特に、喘息発作重積状態又は喘息の急激な悪化状態のときには原則として本剤は投与しないこと。
上記の事項は吸入ステロイドと長時間作用型β2刺激薬の配合剤(ICS/LABA)の添付文書には共通して記載されている。
喘息発作重積状態とは、24時間以上、喘息発作が続いている状態であり、
その治療として、
短時間作用型β2刺激薬(SABA)の吸入、抗コリン薬の吸入、酸素吸入、
全身ステロイドの点滴・経口投与、アミノフィリンの点滴、アドレナリン皮下注などが行われる。
◆ 2について
2 〇 用時振とうして使用すること。
アドエアエアゾールは、吸入ステロイドと長時間作用型β2刺激薬の配合剤の吸入エアゾール剤であり、
これは吸入する前に有効成分を均一に分散させるために振とうする必要がある。
◆ 3について
3 〇 吸入ステロイド薬単独使用時と比べ、ステロイド薬の減量が可能である。
吸入ステロイドに気管支拡張作用のあるβ2刺激薬を併用することで、
相乗効果が得られ、有効性が高まるので、
吸入ステロイド薬単独使用時と比べ、ステロイド薬の減量が可能である。
◆ 4について
4 〇 発作が起こらなくても毎日定期的に使用する。
アドエア125エアゾールは、
吸入ステロイド(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)の配合剤であるが、
これは喘息発作の予防を目的とした長期管理薬(コントローラー)であり、
毎日定期的に吸入する。
◆ 5について
5 〇 薬剤噴霧と吸入のタイミングを同調できない時には、スペーサーの使用を勧める。
吸入エアゾール剤は、
製剤としては定量噴霧式吸入器(metered-dose inhaler:MDI)であり、
吸入時、薬剤噴霧と吸入のタイミングを同調することが求められる。
薬剤噴霧と吸入のタイミングを同調できない時には、
スペーサー(またはリザーバー,チャンバー)などの吸入補助具の使用を勧める。
98回薬剤師国家試験 問285(薬剤) 解答解説
◆ 1について
1 × 全身作用を目的とした吸入エアゾール剤である。
アドエアエアゾールは、は気管支や肺などの気道に対する局所作用を目的としている。
◆ 2について
2 × 肺深部まで薬物を送達させるために、エアゾール粒子の空気力学径が30〜100μmの大きさに設計されている。
吸入剤では、薬物粒子が効率よく目的部位の気管支または肺に到着し、かつ、沈着できるよう空気力学径が0.5〜7μmになるよう設計されている。吸入剤全体では、平均粒子径が2〜3μmの製剤が多い。
粒子径が大きすぎると、目的部位より前にある咽頭などの組織に沈着してしまい、粒子径が小さすぎると、目的部位に沈着せず呼気とともに排出されてしまう。
◆ 3について
3 × 速く吸入する方が吸入効率がよい。
吸入エアゾール剤はゆっくり深く吸う。
速く吸入する方が吸入効率が良いのは、吸入粉末剤(dry powder inhaler:DPI)である。
一般に、吸入粉末剤は早く深く吸う。
◆ 4について
4 × 吸入後に息を止める必要はない。
吸入剤は吸入直後に苦しくない程度(3〜4秒間)で息を止める必要がある。
◆ 5について
5 〇 容器は、密封容器である。
吸入エアゾール剤の吸入器は加圧式定量噴霧式吸入器(pressured metered dose inhaler:pMDI)と呼ばれ、
その容器には、耐圧性の密封容器が用いられる。
密封容器とは,通常の取扱い,運搬又は保存状態において,気体の侵入しない容器をいう。
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