薬剤師国家試験過去問題集 製剤の種類と特性

軟膏基剤に関する記述 92回薬剤師国家試験問173

92回薬剤師国家試験 問173
軟膏基剤に関する記述の正誤について、正しいものはどれか。

 

a 白色ワセリンは、疎水性であり、刺激性が少ない。
b プラスチベースは、流動パラフィンからなり、温度変化により稠度があまり変動しないことや刺激性がないことが特徴である。
c 乳剤性基剤は、分泌物が多いときであっても適用部位の症状を悪化させることはない。
d 親水ワセリンは、水相を有する乳剤性基剤である。
e マクロゴール軟膏では、重合度が異なる各種のマクロゴールを組み合わせて目的に応じた稠度の軟膏基剤をつくることができる。

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92回薬剤師国家試験 問173 解答解説

 

◆ aについて
a 〇 白色ワセリンは、疎水性であり、刺激性が少ない。

 

白色ワセリンとは、石油から得られる炭化水素類の半固形混合物を精製し、脱色したものであり、
白色?微黄色の軟膏様の油脂性基剤である。
一般に油脂性基剤は、皮膚浸透性は低いが、低刺激性で、皮膚の保護・保湿作用があり、
乾燥型と湿潤型の両方の皮膚疾患に用いることができる。

 

 

◆ bについて
b 〇 プラスチベースは、流動パラフィンからなり、温度変化により稠度があまり変動しないことや刺激性がないことが特徴である。

 

プラスチベースとは、流動パラフィンを95%,ポリエチレンを5%の割合で混合したものであり、
無色?微黄色半透明の軟膏様の油脂性基剤である。
流動パラフィンとは、原油や石油の潤滑油留分を精製して得られる無色透明の液体であり、
炭化水素類の混合物である。

 

プラスチベースは、ワセリンよりも伸びがよく、温度変化によって硬さが変化しにくいのが特徴である。

 

 

◆ cについて
c × 乳剤性基剤は、分泌物が多いときであっても適用部位の症状を悪化させることはない。

 

乳剤性基剤は、分泌物の多い時に用いると症状を悪化させることがある。
よって、一般に乳剤性基剤をベースとする塗り薬を分泌物の多い患部には用いない。
分泌物の多い時には水溶性基剤(マクロゴール)をベースとする塗り薬を用いる。

 

 

◆ dについて
d × 親水ワセリンは、水相を有する乳剤性基剤である。
→ 〇 親水ワセリンは、水相を欠く乳剤性基剤である。

 

乳剤性基剤の型として、
水中油型(o/w型)、
水相を有する油中水型、
水相を欠く油中水型がある。

 

親水ワセリンは水相を欠く油中水型の乳剤性基剤であり、
その組成は、白色ワセリンを主体に、サラシミツロウを少量含み、
乳化剤としてコレステロール、乳化補助剤としてステアリルアルコール、抗酸化剤としてジブチルヒドロキシトルエンを含有する。

 

水相を欠く油中水型の乳剤性基剤は、そのままでは水を含んでいないが、水を吸収すると油中水型の乳剤性基剤になる。
他の水相を欠く油中水型の乳剤性基剤として精製ラノリンがある。
精製ラノリンについては下記のリンク先を参照
精製ラノリンの成分と特徴 101回問279の3

 

なお、水相を有する油中水型の乳剤性基剤として、
吸水クリーム,コールドクリーム,加水ラノリンがあり、
水中油型(o/w型)の乳剤性基剤として、
親水クリーム,バニシングクリームがある。

 

関連問題
吸水クリーム(吸水軟膏)は水相を含む乳剤性基剤? 94回問174b

 

親水クリームの特徴と転相 83回問176d

 

 

◆ eについて
e 〇 マクロゴール軟膏では、重合度が異なる各種のマクロゴールを組み合わせて目的に応じた稠度の軟膏基剤をつくることができる。

 

マクロゴールは水溶性基剤である。
マクロゴールは、重合度(分子量)の異なるものを適当な割合で混合することにより、目的の稠度に調整することができる。

 

マクロゴールの詳細については下記のリンク先を参照
マクロゴール 90回問175

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