薬剤師国家試験過去問題集 製剤の種類と特性

静注用脂肪乳剤のイントラリポス輸液の取り扱い 105回薬剤師国家試験問280,281

105回薬剤師国家試験 問280?281
食道がん全摘出後の患者(体重65kg)の栄養管理として、高カロリー輸液による中心静脈栄養法が実施されていた。NST(栄養サポートチーム)が患者ラウンドを行った際に、患者の皮膚状態が乾燥し、鱗状になっていることを発見した。NSTの薬剤師は、必須脂肪酸欠乏を疑い、医師らとともに他の臨床症状や検査値を確認した。協議の結果、静注用脂肪乳剤(イントラリポス輸液20%、100mL、1本)を投与することになった。

 

問280(実務)
看護師から病棟薬剤師に、静注用脂肪乳剤を投与する時の注意点について質問があった。薬剤師による説明として、最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 遮光して投与してください。
2 ゆっくり(3時間以上かけて)投与してください。
3 高カロリー輸液に混合してください。
4 ポリカーボネート製三方活栓を使用してください。
5 0.2μm孔径の輸液フィルターを用いて投与してください。

 

 

問281(薬剤)
今回投与されることになった静注用脂肪乳剤には以下の成分が含まれている。前問における説明の理由として正しいのはどれか。1つ選びなさい。

 

静注用脂肪乳剤のイントラリポス 105回薬剤師国家試験問280,281

 

1 脂肪乳剤の乳濁安定性を高めるため。
2 精製大豆油の分解を抑えるため。
3 精製卵黄レシチンの添加により投与器具への有効成分の吸着を抑えるため。
4 濃グリセリンが脂肪粒子の最大粒子径を0.2 nm以下にする目的で添加されているため。
5 血中での過剰な脂肪粒子の停滞を防ぐため。

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105回薬剤師国家試験 問280(実務) 解答解説

 

静注用脂肪乳剤のイントラリポス 105回薬剤師国家試験問280,281

 

イントラリポス輸液はo/w型の乳濁性注射剤であり、
分散媒である注射用水に、精製大豆油が分散相として分散している。

 

 

◆ 1について
1 × 遮光して投与してください。

 

イントラリポス輸液の取り扱いについて、
投与前の保管時は直射日光や蛍光灯の光が当たらないようにする。
しかし、投与時は特に遮光する必要はない。

 

 

◆ 2について
2 〇 ゆっくり(3時間以上かけて)投与してください。

 

イントラリポス輸液は1日量を3時間以上かけてゆっくり投与することになっている。
これは、血中での過剰な脂肪粒子の停滞を防ぐためである。

 

 

◆ 3について
3 × 高カロリー輸液に混合してください。

 

脂肪乳剤は基本的に単独で投与する。
やむを得ず他の栄養輸液と同時に投与する場合は、混合はせず、側管から投与する。

 

 

◆ 4について
4 × ポリカーボネート製三方活栓を使用してください。

 

イントラリポス輸液の添付文書の適用上の注意の項に下記の記述がある。
「本剤は脂肪乳剤であるため、接合部がポリカーボネート製の輸液セット等を使用した場合、その接合部にひび割れが生じ、血液及び薬液漏れ、空気混入等の可能性があるので注意すること。」

 

 

◆ 5について
5 × 0.2μm孔径の輸液フィルターを用いて投与してください。

 

脂肪乳剤を投与する際、輸液フィルターは用いない。
脂肪乳剤の脂肪粒子の粒子径は0.1μm〜0.7μmであり、平均粒子径は0.4μmである。
よって、脂肪乳剤に0.2μm孔径の輸液フィルターを用いると脂肪粒子が通過できず、詰まってしまう。

 

 

105回薬剤師国家試験 問281(薬剤) 解答解説

 

問280の静注用脂肪乳剤を投与する時の注意点は、
“ゆっくり(3時間以上かけて)投与すること”であった。
その理由として正しいのは、
5の“血中での過剰な脂肪粒子の停滞を防ぐため”である。

 

 

◆ 3,4について
静注用脂肪乳剤のイントラリポス 105回薬剤師国家試験問280,281

 

3 × 精製卵黄レシチンの添加により投与器具への有効成分の吸着を抑えるため。
精製卵黄レシチンは乳化剤として添加されている。

 

4 × 濃グリセリンが脂肪粒子の最大粒子径を0.2 nm以下にする目的で添加されているため。
濃グリセリンは等張化剤として添加されている。

 

イントラリポス輸液はo/w型の乳濁性注射剤であり、
分散媒である注射用水に、精製大豆油が分散相として分散している。
精製卵黄レシチンは界面活性剤であり、
本剤では水に大豆油を乳化させるための乳化剤として働く。
脂肪乳剤の投与器具としてポリ塩化ビニル製の輸液セット等を使用すると、界面活性剤の働きにより、輸液セットに可塑剤として含まれるDHEP(フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル))が溶出する。
よって、脂肪乳剤の投与にはDEHP を含まない輸液セット等を使用することが望ましい。

 

 

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105回問280,281(e-RECさん)

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