ハードファット(ウィテプゾール) を用いた坐剤の特性 100回薬剤師国家試験問279
100回薬剤師国家試験 問279
入院中の5歳女児。体重21kg。39.0℃の発熱が認められたので、アセトアミノフェン坐剤200mgが投薬されることになった。
問279(薬剤)
本坐剤の基剤には、半合成油脂性基剤であるハードファット(ウィテプゾール)が用いられている。ハードファットに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 直腸内の水分により速やかに溶解し、主薬を放出する。
2 冷所保存してはならない。
3 飽和脂肪酸のモノ、ジ、トリグリセリドの混合物である。
4 坐剤の成形にプラスチック製容器は使用できない。
5 結晶多形が存在する。
100回薬剤師国家試験 問279 解答解説
◆ 1,2について
1 × 直腸内の水分により速やかに溶解し、主薬を放出する。
→ 〇 直腸内で体温により溶融し、主薬を放出する。
2 × 冷所保存してはならない。
ハードファット(ウィテプゾール)は油脂性基剤である。
油脂性基剤を用いた坐剤は、直腸内の体温により基剤が溶け、
有効成分が直腸内の分泌液等の水分に放出される。
油脂性基剤は、融点が体温より少し低い温度であり、室温で溶けることがある。
そのため、油脂性基剤を用いた坐剤は30℃以下で保存する必要があり、
中には冷所保存が指定されているものがある。
例えば、アルピニー坐剤200は、
アセトアミノフェン200mg含有でハードファットを基剤とする坐剤であるが、
添付文書上の貯法の項で“30℃以下で保管”とだけ記載されている。
一方、アンヒバ坐剤小児用200mgは、
同じくアセトアミノフェン200mg含有でハードファットを基剤とする坐剤であるが、
添付文書上の貯法の項で“冷暗所保存”と指定されている。
なお、親水性基剤のマクロゴール(ポリエチレングリコール)を用いた坐剤は、
直腸内の分泌液などの水分に溶解または分散し、有効成分を放出する。
マクロゴールは融点が50℃前後であるため、一般に冷所保存の必要はない。
関連問題
座薬 マクロゴール基剤からの薬物の放出 95回問174c
◆ 3,5について
3 〇 飽和脂肪酸のモノ、ジ、トリグリセリドの混合物である。
5 × 結晶多形が存在する。
→ 〇 ハードファット(ウィテプゾール)は結晶多形が存在しない。
ハードファット(ウィテプゾール)は、C12〜C18の飽和脂肪酸のモノ、ジ、トリグリセリド(グリセリン脂肪酸エステル)の混合物であり、結晶多形が存在しない。
なお、別の油脂性基剤のカカオ脂は、パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸などの脂肪酸の混合物であり、
結晶多形が存在する。
◆ 4について
4 × 坐剤の成形にプラスチック製容器は使用できない。
坐剤の成形には金属製やプラスチック製の容器が用いられる。
なお、日本薬局方の製剤総則において、坐剤に用いる容器は,通例,密閉容器とすると規定されている。
製剤の品質に湿気が影響を与える場合は,防湿性の容器を用いるか,又は防湿性の包装を施す。
★ 他サイトさんの解説リンク
100回問278,279(e-RECさん)