吸入エアゾール剤と吸入粉末剤の違い 104回薬剤師国家試験問276,277
104回薬剤師国家試験 問277
70歳女性。気管支喘息のため吸入療法を行っている。本日、デバイスが異なる吸入剤へ変更したため、医師から薬剤師に吸入指導の依頼があった。薬歴を確認したところ、前回の処方1から処方2へ変更になっていた。
患者に確認したところ、認知機能、視力、聴力及び手指筋力の低下は認められなかった。
問276(実務)
薬剤師がこれまでのデバイスとの吸入方法等の違いを指導するポイントとして適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 使用前によく振る。
2 吸入直前に息を強く吐き出してから吸い込む。
3 できるだけ速く吸い込む。
4 噴霧と吸気のタイミングが合わないときにはスペーサーを使用する。
5 吸入後にそのまま3〜4秒程度息を止める。
問277(薬剤)
処方1と処方2の製剤の特徴に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 処方1の製剤は、吸入量が一定となるように調製された固体粒子のエアゾールとして吸入する製剤である。
2 処方1の製剤は、薬物の固体粒子が液状媒体に懸濁した状態で吸入器に充てんされた製剤である。
3 処方1の製剤は、容器に充てんした噴射剤と共に、一定量の有効成分を噴霧する定量噴霧式吸入剤である。
4 処方2の製剤には、密閉容器が用いられる。
5 処方2の製剤は、薬剤を含むエアゾール缶、定量バルブとアクチュエーター等から構成される。
104回薬剤師国家試験 問276(実務) 解答解説
◆ 1について
1 〇 使用前によく振る。
処方1のアドエアディスカスは、
吸入ステロイドと長時間作用型β2刺激薬の配合剤の吸入粉末剤(Dry Powder Inhalers:DPI)であり、これは吸入直前に振とうする必要はない。
処方2のアドエアエアゾールは、
吸入ステロイドと長時間作用型β2刺激薬の配合剤の吸入エアゾール剤(Metered-Dose Inhalers:MDI)であり、これは吸入する直前に有効成分を均一に分散させるためによく振とうする必要がある。
◆ 2について
2 × 吸入直前に息を強く吐き出してから吸い込む。
吸入粉末剤も吸入エアゾール剤も吸入直前に息を吐き出してから吸入するが、
無理のない程度に吐き出せばよい。
◆ 3について
3 × できるだけ速く吸い込む。
処方2の吸入エアゾール剤はゆっくり深く吸う。
速く吸入する方が吸入効率が良いのは、処方1の吸入粉末剤(dry powder inhaler:DPI)である。
一般に、吸入粉末剤は早く深く吸う。
◆ 4について
4 〇 噴霧と吸気のタイミングが合わないときにはスペーサーを使用する。
吸入エアゾール剤は、
吸入時、薬剤噴霧と吸入のタイミングを同調することが求められる。
薬剤噴霧と吸入のタイミングを同調できない時には、スペーサー(またはリザーバー,チャンバー)などの吸入補助具の使用を勧める。
◆ 5について
5 × 吸入後にそのまま3〜4秒程度息を止める。
吸入粉末剤も吸入エアゾール剤も、
吸入直後に苦しくない程度(3〜4秒間)で息を止める必要がある。
104回薬剤師国家試験 問277 解答解説
1 〇 処方1の製剤は、吸入量が一定となるように調製された固体粒子のエアゾールとして吸入する製剤である。
2 × 処方1の製剤は、薬物の固体粒子が液状媒体に懸濁した状態で吸入器に充てんされた製剤である。
→ 〇 処方2の製剤は、薬物の固体粒子が液状媒体に懸濁した状態で吸入器に充てんされた製剤である。
3 × 処方1の製剤は、容器に充てんした噴射剤と共に、一定量の有効成分を噴霧する定量噴霧式吸入剤である。
→ 〇 処方2の製剤は、容器に充てんした噴射剤と共に、一定量の有効成分を噴霧する定量噴霧式吸入剤である。
4 × 処方2の製剤には、密閉容器が用いられる。
→〇 処方2の製剤には、耐圧性の密封容器が用いられる。
なお、処方1の製剤には、密閉容器が用いられる。
5 〇 処方2の製剤は、薬剤を含むエアゾール缶、定量バルブとアクチュエーター等から構成される。
◆ 処方1:アドエアディスカスについて
処方1のアドエアディスカスは吸入粉末剤(Dry Powder Inhalers:DPI)である。
日本薬局方の製剤総則において、吸入粉末剤は、“吸入量が一定となるように調製された固体粒子のエアゾールとして吸入する製剤と定義“されている。
吸入粉末剤(DPI)は、粉末の薬剤が吸入器に充填された製剤であり、患者の吸気で吸入し、
吸気により薬物粒子が分散されエアゾールとなる仕組みとなっている。
吸入粉末剤は、日本薬局方において、吸入剤の空気力学的粒度測定法に適合するよう規定されている。
定量吸入式の吸入粉末剤は、日本薬局方において、吸入剤の送達量均一性試験法に適合するよう規定されている。
吸入粉末剤に用いる容器は、通例、密閉容器とする。
関連問題
吸入剤の送達量均一性試験法とは 105回問183の3
◆ 処方2:アドエアエアゾールについて
処方2のアドエアエアゾールは、吸入エアゾール剤(Metered-Dose Inhalers)に分類され、その吸入器は加圧式定量噴霧式吸入器(pressured metered dose inhaler:pMDI)と呼ばれる。
日本薬局方の製剤総則において、吸入エアゾール剤は、“容器に充てんした噴射剤と共に、一定量の有効成分を噴霧する定量噴霧式吸入剤”と定義されている。
加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)は、加圧されて液状となった噴射剤に薬剤を溶解または懸濁し、耐圧性の容器に充填し、定量バルブを装着した製剤であり、容器のボンベを押すと噴射口から霧状の薬剤が一定量噴霧され、それを吸入する。
吸入エアゾール剤は、日本薬局方において、吸入剤の空気力学的粒度測定法、および、送達量均一性試験法に適合するよう規定されている。
吸入エアゾール剤の容器には、耐圧性の密封容器が用いられる。
下記のように、吸入エアゾール剤は、薬剤を含むエアゾール缶、定量バルブとアクチュエーター等から構成される。
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