薬剤師国家試験過去問題集 製剤の種類と特性

ライゾデグ配合注 107回薬剤師国家試験問276,277

107回薬剤師国家試験 問276?277
55歳男性。2型糖尿病。内服薬による血糖のコントロールが不良のため、インスリン導入の目的で教育入院を行い、超速効型インスリンの投与が開始された。しかし退院後、仕事が多忙のため自己注射が不規則になった。現状の改善が図れないことから、かかりつけ薬剤師が処方医にトレーシングレポートを書き、使用製剤の見直しについて処方提案を行った。その結果、次回来局時には以下のように変更された処方箋を持参した。

 

ライゾデグ配合注 107回薬剤師国家試験問276,277

 

問276(実務)
生活の状況を考慮して処方変更となった患者への説明として、適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 以前処方されていた超速効型インスリンも併用する。
2 注射をする前に、十分に転倒混和して懸濁させる。
3 注射を忘れた日は、空腹時でも注射する。
4 風邪に伴う発熱や悪寒が現われても自己判断で中止しない。
5 血糖値に応じて適宜注入単位を調整する。

 

 

問277(薬剤)
図は、皮下投与後のインスリンアナログの動態を示している。インスリンアナログの動態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

ライゾデグ配合注 107回薬剤師国家試験問276,277

 

1 本製剤中で、インスリン デグルデクは、難水溶性で安定なダイヘキサマーとして存在する。
2 本製剤中で、インスリン アスパルト及びインスリン デグルデクは、アルブミンと結合し安定化されている。
3 本製剤を皮下投与後、インスリン アスパルトのヘキサマーは、皮下組織において速やかにモノマーに解離する。
4 本製剤を皮下投与後、インスリン デグルデクのダイヘキサマーは、皮下組織でマルチヘキサマーを形成した後、徐々にモノマーに解離する。
5 インスリン アスパルトは、循環血中でアルブミンに強く結合し、標的組織に移行する。

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題集 製剤の種類と特性 一覧へ

 

 

107回薬剤師国家試験 問276(実務) 解答解説

 

ライゾデグ配合注 107回薬剤師国家試験問276,277

 

◆ 1について
1 × 以前処方されていた超速効型インスリンも併用する。

 

新しく処方されたライゾデグ配合注は、超速効型インスリンのインスリン アスパルトと持効型インスリンのインスリン デグルデクを3:7のモル比で含有する溶解インスリン製剤であり、1日1〜2回皮下注射する。
以前処方されていた超速効型インスリンでは自己注射が不規則との理由から処方変更になったため、
以前の超速効型インスリンは併用しない。

 

 

◆ 2について
2 × 注射をする前に、十分に転倒混和して懸濁させる。

 

ライゾデグ配合注は溶解インスリンアナログ注射液であるため、
注射する前に混和する必要はない。
なお、懸濁注射液は、均一にするために注射する前に混和する必要がある。

 

 

◆ 3について
3 × 注射を忘れた日は、空腹時でも注射する。

 

ライゾデグ配合注は超速効型インスリンを含むので、食事の直前に打つ必要がある。
食事をしない空腹時に注射してはいけない。
注射を忘れた場合は医師に相談する。

 

 

◆ 4について
4 〇 風邪に伴う発熱や悪寒が現われても自己判断で中止しない。

 

糖尿病患者が発熱,咳,嘔吐,下痢,食欲不振など体調不良に陥っている状態をシックデイと呼ぶ。
シックデイの場合の対応として、インスリン注射は自己判断で中止せず、医師の指示を仰ぐ。

 

 

◆ 5について
5 × 血糖値に応じて適宜注入単位を調整する。

 

処方箋に記載された一定の用法用量を投与する。

 

 

107回薬剤師国家試験 問277(薬剤) 解答解説

 

ライゾデグ配合注 107回薬剤師国家試験問276,277

 

下記はライゾデグ配合注の添付文書の作用機序の記述であり。
「本剤は持効型のインスリン デグルデクと超速効型のインスリン アスパルトを含有するインスリン製剤である。本剤は、製剤中でインスリン デグルデクが可溶性で安定なダイヘキサマー、インスリン アスパルトが可溶性で安定なヘキサマーとして存在するよう最適化されている。
インスリン アスパルトヘキサマーは、投与後ただちに皮下組織においてモノマーに解離し、速やかに毛細血管に吸収される。
インスリン デグルデクダイヘキサマーは、投与後毛細血管に吸収されない分子サイズの可溶性マルチヘキサマーを皮下で形成する。マルチヘキサマーは一時的に皮下組織にとどまり、そこからインスリン デグルデクモノマーが解離し、緩徐にかつ持続的に皮下組織から循環血中へ移行する。さらに、持続化への寄与の程度は小さいが、脂肪酸の一部を介してアルブミンと結合する。これにより、本剤のBolus画分(インスリン アスパルト)とBasal画分(インスリン デグルデク)の作用が明らかに区別される。」

 

以下、選択肢の記述の正誤ついて述べる。

 

◆ 1,2について
1 × 本製剤中で、インスリン デグルデクは、難水溶性で安定なダイヘキサマーとして存在する。

 

2 × 本製剤中で、インスリン アスパルト及びインスリン デグルデクは、アルブミンと結合し安定化されている。

 

ライゾデグ配合注の製剤中において、
インスリン デグルデクは可溶性で安定なダイヘキサマー(6量体が2つ結合したもの)として存在し、
インスリン アスパルトは可溶性で安定なヘキサマー(6量体)として存在するよう調整されている。

 

 

◆ 3について
3 〇 本製剤を皮下投与後、インスリン アスパルトのヘキサマーは、皮下組織において速やかにモノマーに解離する。

 

◆ 4について
4 〇 本製剤を皮下投与後、インスリン デグルデクのダイヘキサマーは、皮下組織でマルチヘキサマーを形成した後、徐々にモノマーに解離する。

 

◆ 5について
5 × インスリン アスパルトは、循環血中でアルブミンに強く結合し、標的組織に移行する。

 

インスリンアスパルトは、循環血中でアルブミンに結合することなくインスリンレセプターに結合する。
インスリンデグルデクは、モノマー(単量体)に解離した後、皮下組織および循環血中でアルブミンに結合する。このことはインスリンデグルデクの作用の持続化に寄与している。

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
107回問276,277(e-RECさん)

トップへ戻る