薬剤師国家試験過去問題集 医薬品の添加剤

88回薬剤師国家試験問175 製剤に用いられる日本薬局方収載のセルロース類

88回薬剤師国家試験 問175
製剤に用いられる日本薬局方収載のセルロース類に関する記述の正誤について、正しいものはどれか。
a 結晶セルロースはα-セルロースを酸で部分的に解重合し、精製したものであり、水によく溶けるので錠剤の崩壊剤として用いられる。
b 酢酸フタル酸セルロースは、無水フタル酸と部分アセチル化セルロースとの反応生成物であり、腸溶性コーティングに用いられる。
c ヒドロキシプロピルセルロースはセルロースのヒドロキシプロピルエーテルであり、フィルムコーティング剤として用いられる。
d メチルセルロースはセルロースのメチルエステルであり、粘稠化剤として用いられ、また、膨張性下剤としても用いられる。

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88回薬剤師国家試験 問175 解答解説

 

◆ aについて
a × 結晶セルロースはα-セルロースを酸で部分的に解重合し、精製したものであり、水によく溶けるので錠剤の崩壊剤として用いられる。

 

結晶セルロースは水に不溶である。
結晶セルロースは、α−セルロースを鉱酸(無機酸)で部分的に解重合し,精製した半合成高分子である。
結晶セルロースは、水や有機溶剤に不溶であるが、水を吸って膨潤する性質がある。
結晶セルロースは、結合剤,崩壊剤,滑沢剤の機能を兼ね備えた賦形剤として用いられるが、
結合剤として用いられる場合は直接打錠用に限られる。

 

関連問題
結晶セルロースは直接打錠用の結合剤として用いられる? 97回問51

 

 

◆ bについて
b 〇 酢酸フタル酸セルロースは、無水フタル酸と部分アセチル化セルロースとの反応生成物であり、腸溶性コーティングに用いられる。

 

酢酸フタル酸セルロース(セルロースアセテートフタレート,セラセフェート:CAP)は、無水フタル酸と部分アセチル化セルロースとの反応生成物であり、セルロースの酢酸またはフタル酸の混合エステルであり、セルロースのヒドロキシ基の一部にアセチル基(−COCH3) とカルボキシベンゾイル基(−COC6H4COOH)がエステル結合した半合成高分子である。
酢酸フタル酸セルロース(セラセフェート)のようなフタル酸エステルは腸溶性コーティング剤として汎用される。

 

 

◆ cについて
c 〇 ヒドロキシプロピルセルロースはセルロースのヒドロキシプロピルエーテルであり、フィルムコーティング剤として用いられる。

 

ヒドロキプロピルセルロースは、セルロースのヒドロキシ基の一部にヒドロキシプロピル基(−CH2CHOHCH3)が結合してエーテルとなっている半合成高分子である。
中高置換度のヒドロキプロピルセルロース(HPC)は、水やアルコールに溶け、粘調性のある溶液またはゲルとなり、湿式顆粒圧縮法の結合剤,胃溶性フィルムコーティング剤に使用される。
また、ヒドロキシプロピルセルロースは、水和によりゲル化する性質を利用して、徐放性のマトリックス基剤としても用いられる。
低置換度のヒドロキプロピルセルロース(L-HPC)は、水やアルコールに溶けず、崩壊剤として用いられる。

 

関連問題
中高置換度と低置換度のヒドロキシプロピルセルロースの用途 93回問177b

 

 

◆ dについて
d × メチルセルロースはセルロースのメチルエステルであり、粘稠化剤として用いられ、また、膨張性下剤としても用いられる。
→ 〇 メチルセルロースはセルロースのメチルエーテルであり、粘稠化剤として用いられ、また、膨張性下剤としても用いられる。

 

メチルセルロースは、セルロースのヒドロキシ基の一部にメチル基(−CH3)が結合してエーテルとなっている半合成高分子であり、メチルエステルではない。
メチルセルロースはメチル化の程度により溶解性が異なるが、水溶液は粘調性があるため、粘調化剤(増粘剤)として用いられる。
メチルセルロースの水溶液は、低温では液状であるが、加熱によりゼリー状となる。
メチルセルロースは添加剤として、結合剤,増粘剤,懸濁化剤(懸濁安定化剤),水溶性の軟膏基剤に用いられる。
また、内服すると腸内で水を吸収して膨潤するため、膨張性下剤としても用いられる。

 

チモロールマレイン酸塩を主薬とするリズモン点眼では、
メチルセルロースの熱可逆的ゾル−ゲル転移を利用し、持続性点眼液としている。

 

関連問題
メチルセルロースは点眼剤の粘調剤として使用される 96回問175b

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