添加剤の種類や量を変更したときに起こり得る錠剤特性の変化 105回薬剤師国家試験問181
105回薬剤師国家試験 問181
光に対して不安定な薬物Aを含有するフィルムコーティング錠に含まれる添加剤を以下に示す。添加剤の種類や量を変更したときに起こり得る錠剤特性の変化に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 カルメロースカルシウムをカルメロースナトリウムに変更すると、錠剤は崩壊しにくくなる。
2 ヒドロキシプロピルセルロースの配合量を相対的に減らすと、素錠の硬度は下がりやすくなる。
3 ステアリン酸マグネシウムの配合量を相対的に減らすと、キャッピングが起こりやすくなる。
4 ヒプロメロースをヒプロメロースフタル酸エステルに変更すると、日本薬局方崩壊試験第2液中における薬物Aの溶出は起こらない。
5 酸化チタンを除いても、本錠剤に光を当てた際の薬物Aの安定性は変わらない。
105回薬剤師国家試験 問181 解答解説
◆ 1について
1 〇 カルメロースカルシウムをカルメロースナトリウムに変更すると、錠剤は崩壊しにくくなる。
カルメロースカルシウム(CMC-Ca)はカルメロースのカルシウム塩であり、水に不溶で、吸水して膨潤するため崩壊剤として用いられる。崩壊剤は錠剤の崩壊を促進する添加剤である。
カルメロースナトリウム(CMC-Na)はカルメロースのナトリウム塩であり、水溶性で、水溶液は粘調であり、結合剤として用いられる。結合剤は錠剤の硬度を高める添加剤である。
したがって、カルメロースカルシウムをカルメロースナトリウムに変更すると、錠剤は崩壊しにくくなる。
◆ 2について
2 〇 ヒドロキシプロピルセルロースの配合量を相対的に減らすと、素錠の硬度は下がりやすくなる。
ヒドロキプロピルセルロースは、セルロースのヒドロキシ基の一部にヒドロキシプロピル基(−CH2CHOHCH3)を結合させた半合成高分子であるが、置換度によって物性が異なる。
本問のヒドロキシプロピルセルロースは中高置換度のヒドロキプロピルセルロース(HPC)であり、
湿式顆粒圧縮法の結合剤として用いられている。
よって、結合剤であるヒドロキシプロピルセルロースの配合量を相対的に減らすと、錠剤の硬度は下がりやすくなる。
関連問題
中高置換度ヒドロキシプロピルセルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 93回問177b
◆ 3について
3 × ステアリン酸マグネシウムの配合量を相対的に減らすと、キャッピングが起こりやすくなる。
→ 〇 ステアリン酸マグネシウムの配合量を相対的に減らすと、ピッキング・スティッキング・バインディングが起こりやすくなる。
ステアリン酸マグネシウムは滑沢剤である。
滑沢剤は、適量を添加することにより、粉体の流動性を改善し、
臼や杵に対する付着防止・摩擦軽減、充填性の改善、圧縮成形性の向上などの効果がある。
滑沢剤の量がが少なすぎると、
錠剤と杵が付着することによるピッキング・スティッキングや
錠剤と臼との間の摩擦によるバインディングの打錠障害が起こりやすくなる。
一方、滑沢剤の量が過剰だと、
粒子間結合力低下による錠剤硬度の低下で、
キャッピング・ラミネーションの打錠障害が起こりやすくなる。
関連問題
滑沢剤の量が多すぎると錠剤硬度が低下する 90回問176d
◆ 4について
4 × ヒプロメロースをヒプロメロースフタル酸エステルに変更すると、日本薬局方崩壊試験第2液中における薬物Aの溶出は起こらない。
ヒプロメロースは胃溶性のフィルムコーティング剤であるが、
ヒプロメロースフタル酸エステルは、酸性で溶けずアルカリ性で溶けるため、
腸溶性コーティング剤として用いられる。
日本薬局方崩壊試験の第1液のpHは約1.2、第2液のpHは約6.8なので、
腸溶性コーティング剤のヒプロメロースフタル酸エステルを用いた場合、
第1液では薬物Aの溶出は起こらず、第2液で溶出が起こることになる。
なお、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース:HPMC)は、
胃溶性フィルムコーティング剤の他、
湿式顆粒圧縮法の結合剤,増粘剤,懸濁剤,固体分散体の担体などとしても使用される。
◆ 5について
5 × 酸化チタンを除いても、本錠剤に光を当てた際の薬物Aの安定性は変わらない。
酸化チタンには光を散乱する作用があり、
光に不安定な主薬の光による分解を抑制するために添加される。
よって、酸化チタンを除くと、光に当てた際の薬物Aの安定性は低下する。
★ 他サイトさんの解説リンク
105回問181(e-RECさん)