クロストリディオイデス・ディフィシルによる偽膜性大腸炎の治療に用いられる薬 111回薬剤師国家試験問61の解説
111回薬剤師国家試験 問61
クロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)による
偽膜性大腸炎の治療に用いられるのはどれか。1つ選びなさい。
1 クラリスロマイシン
2 レボフロキサシン
3 アモキシシリン
4 メトロニダゾール
5 ミノサイクリン
111回薬剤師国家試験 問61 解答解説
クロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)による
偽膜性大腸炎の治療に用いられるのは、
選択肢4のメトロニダゾールです。

偽膜性大腸炎については下記のページで解説しています。
・偽膜性大腸炎とは
C. difficile 感染症 の治療薬としては、
フィダキソマイシン や バンコマイシン、メトロニダゾールが用いられます。
以下では各治療薬の特徴を説明します。
フィダキソマイシン
フィダキソマイシンは構造的には18員環マクロライド系ですが、
作用機序は一般的なマクロライド系と異なります。
一般的なマクロライド系、例えばクラリスロマイシンやアジスロマイシンは、
主に 50Sリボソームに結合してタンパク質合成を阻害します。
一方、フィダキソマイシンは主に RNAポリメラーゼを阻害してRNA合成を抑制します。
フィダキソマイシンは、C. difficile に対して強い抗菌活性を示します。
さらに重要なのは、
腸管からほとんど吸収されず、腸管内に高濃度でとどまることです。
これは C. difficile 感染性腸炎では大きな利点です。
フィダキソマイシンの大きな利点は、
比較的 狭域 で、正常腸内細菌叢への影響が少ないことです。
C. difficile 感染症は、そもそも抗菌薬によって腸内細菌叢が壊れて起こります。
したがって治療薬がさらに腸内細菌叢を大きく乱すと、再発しやすくなります。
フィダキソマイシンは腸内細菌叢への影響が比較的少ないため、
再発を減らしやすいという利点があります。
バンコマイシン
バンコマイシンは グリコペプチド系抗菌薬で、
細菌細胞壁の合成を抑制します。
バンコマイシンは、
細菌の細胞壁の材料であるペプチドグリカンの前駆体の末端に結合します。
具体的には、
ペプチドグリカン前駆体のペンタペプチドC末端のD-Ala-D-Ala
という部分に結合します。
その結果、
ペプチドグリカン前駆体が細胞壁合成酵素に利用されにくくなり、
主に次の@Aの過程が阻害されます。
@トランスグリコシル化
糖鎖を伸ばして、ペプチドグリカンの骨格を作る反応です。
Aトランスペプチド化
ペプチド鎖同士を架橋して、細胞壁を強固にする反応です。
そのため、ペプチドグリカンの伸長や架橋がうまく進まず、
細胞壁合成が抑制されます。
バンコマイシンを経口投与すると、通常は消化管からほとんど吸収されません。
そのため、腸管内に高濃度で残ります。
これは C. difficile 感染性腸炎では大きな利点です。
一方、注射用バンコマイシンは通常、腸管内に十分移行しません。
そのため、C. difficile 感染症の腸炎に対しては、基本的に 内服で使う必要があります。
メトロニダゾール
メトロニダゾールは原虫又は細菌感染の治療薬です。
メトロニダゾールは、病原体内でニトロ基?NO2が還元され、
ニトロソ化合物(R-NO)となります。
この R-NOが抗原虫作用及び抗菌作用を示します。
また、反応の途中で生成するヒドロキシラジカルも抗病原体作用に関与します。
メトロニダゾール投与後、
病原体内で発生した反応性の高い化学種が、
DNA鎖を切断することでDNAらせん構造の不安定化を起こすと考えられています。
その結果、病原体は正常に増殖できなくなります。
メトロニダゾールは、バンコマイシンやフィダキソマイシンのように
「消化管から吸収されず腸管内に高濃度で残る」タイプではありません。
メトロニダゾールは経口投与で消化管から吸収され、
血中に入ったあと、腸管組織や腸管内へ移行します。
腸炎が起きている部位に薬剤が届き、C. difficile を抑えます。
メトロニダゾールも基本は経口投与ですが、
経口投与ができない場合や重症例などでは注射投与される場合もあります。