薬物の経口吸収動態についての記述 99回薬剤師国家試験問167
99回薬剤師国家試験 問167
薬物の経口吸収動態についての記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 インドメタシンファルネシルは、高脂肪食を摂取した後に服用すると、脂肪成分と結合するため、吸収量が減少する。
2 リファンピシンの反復投与により、小腸上皮細胞のP-糖タンパク質の発現が誘導され、ジゴキシンの吸収量が増大する。
3 リボフラビンは、十二指腸付近のトランスポーターにより吸収されるので、プロパンテリン臭化物の併用により吸収量が増大する。
4 セファレキシンの吸収は、ペプチドトランスポーターPEPT1を介したNa+との共輸送により行われる。
5 グリセオフルビンは、その粒子径が小さいほど有効表面積が大きく、溶解が速いため、吸収速度が大きい。
99回薬剤師国家試験 問167 解答解説
◆ 1について
1 × インドメタシンファルネシルは、高脂肪食を摂取した後に服用すると、脂肪成分と結合するため、吸収量が減少する。
インドメタシンファルネシル(インフリー)のように脂溶性が高く難溶性の薬物は、
高脂肪食を摂取した後に服用すると、胆汁酸により可溶化されるため、吸収量が増大する。
◆ 2について
2 × リファンピシンの反復投与により、小腸上皮細胞のP-糖タンパク質の発現が誘導され、ジゴキシンの吸収量が増大する。
小腸上皮細胞では、P-糖タンパク質は小腸の管腔側となる刷子縁膜側に発現し、薬物を細胞内から小腸管腔に排出し、吸収を抑制している。
リファンピシンの反復投与により、小腸上皮細胞のP-糖タンパク質の発現が誘導され、ジゴキシンの排出が促進され、吸収量は低下する。
また、リファンピシンはCYP3A4などの肝代謝酵素を誘導する作用もあるので、ジゴキシンの肝代謝も促進される。
◆ 3について
3 〇 リボフラビンは、十二指腸付近のトランスポーターにより吸収されるので、プロパンテリン臭化物の併用により吸収量が増大する。
リボフラビン(ビタミンB2)は、十二指腸付近のトランスポーターを介して吸収される。
食事や抗コリン薬により胃内容排出速度が低下すると、リボフラビンが少しずつ小腸に輸送され、
トランスポーターが飽和しにくくなるので、吸収量が増大する。
一方、絶食などで胃内容排出速度が上昇すると、短時間で多くのリボフラビンが小腸に輸送され、
トランスポーターが飽和しやすくなるので、吸収量が低下する。
◆ 4について
4 × セファレキシンの吸収は、ペプチドトランスポーターPEPT1を介したNa+との共輸送により行われる。
→ 〇 セファレキシンの吸収は、ペプチドトランスポーターPEPT1を介したH+との共輸送により行われる。
セファレキシンは、小腸粘膜のペプチドトランスポーターPEPT1が介在する輸送により吸収される。
ペプチドトランスポーターPEPT1は、H+/ペプチド共輸送体であり、二次性能動輸送の担体である。
PEPT1は、一次性能動輸送によって生じたプロトンの濃度勾配を駆動力とし、プロトンとジ・トリペプチドを共輸送するので、二次性能動輸送担体に分類される。
PEPT1はオリゴペプチドの他、β-ラムタム系抗生物質,アンギオテンシン変換酵素阻害薬,バラシクロビル,バルガンシクロビルなど構造がオリゴペプチドに類似した薬物の吸収にも関与すると考えられている。
◆ 5について
5 〇 グリセオフルビンは、その粒子径が小さいほど有効表面積が大きく、溶解が速いため、吸収速度が大きい。
薬物の溶解速度を表す式としてノイエス−ホイットニー式があり、
この式によると、
薬物の表面積が大きいほど、溶解速度は速くなる。
粉体の平均粒子径と比表面積は反比例するので、
粒子径を小さくすれば表面積は大きくなり、
溶解速度は速くなり、吸収速度は速くなる。
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