薬物の吸収に関する記述 105回薬剤師国家試験問169

105回薬剤師国家試験 問169
薬物の吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 抗コリン薬は、胃内容排出速度を増大させ、経口投与された併用薬の最高血中濃度到達時間の短縮や最高血中濃度の上昇を引き起こす。
2 鼻粘膜は、重層扁平上皮細胞からなり、細胞間は密着結合により強固に結合しているため、バリアー機能は高く、高分子薬物の吸収部位としては不適である。
3 皮膚の角質層は皮膚を構成する層の中で最も厚いため、薬物の経皮吸収における最大の障壁となる。
4 口腔粘膜からの薬物吸収は、一般に受動拡散によって起こるが、その吸収速度は部位により異なり、舌下粘膜で大きい。
5 直腸下部からの薬物吸収は、門脈や肝臓を通過せずに全身循環に移行するため、肝初回通過効果を回避できる。

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105回薬剤師国家試験 問169 解答解説

 

◆ 1について
1 × 抗コリン薬は、胃内容排出速度を増大させ、経口投与された併用薬の最高血中濃度到達時間の短縮や最高血中濃度の上昇を引き起こす。

 

抗コリン薬は、消化管運動を抑制し、胃内容排出速度を低下させる。

 

小腸で単純拡散により吸収される薬物は、抗コリン薬の併用により、
胃内容排出速度が低下すると、吸収速度が低下し、
最高血中濃度到達時間の延長や最高血中濃度の低下を引き起こす。

 

一方で、小腸のトランスポーターを介して吸収される薬物の場合、
抗コリン薬により胃内容排出速度が低下すると、薬物が少しずつ小腸に輸送されることで、
トランスポーターが飽和しにくくなるので、吸収量が増大する。

 

 

◆ 2について
2 × 鼻粘膜は、重層扁平上皮細胞からなり、細胞間は密着結合により強固に結合しているため、バリアー機能は高く、高分子薬物の吸収部位としては不適である。

 

鼻粘膜は、多列線毛上皮からなり、厚さは50〜70μmである。線毛の働きで、鼻粘液は鼻の奥へ流れる。鼻粘膜は細胞間で密着結合を形成しているが、バリアー機能は比較的に低く、薬物の分子量が1000以下であれば、透過可能である。
鼻粘膜の下には動脈、静脈、リンパ管が非常に発達している。鼻粘膜から吸収された薬物は門脈を通らず、直接全身循環血に入るため、肝初回通過効果を回避できる。
よって、経鼻投与は、経口投与で吸収不良の薬物の代替の投与経路になり得る。

 

 

◆ 3について
3 × 皮膚の角質層は皮膚を構成する層の中で最も厚いため、薬物の経皮吸収における最大の障壁となる。

 

角質層は、表皮の最も外側に存在する厚さ10〜15μmの薄い層である。
角質層は、重層扁平上皮からなり、死んだ細胞と細胞間の脂質が大きな割合を占め、外部からの物質の侵入に対する第一のバリアーであり、薬物の経皮吸収における最大の障壁となる。

 

 

◆ 4について
4 ○ 口腔粘膜からの薬物吸収は、一般に受動拡散によって起こるが、その吸収速度は部位により異なり、舌下粘膜で大きい。

 

口腔粘膜は、重層扁平上皮からなり、消化管よりも皮膚に近い構造を持っている。
口腔粘膜には、角質化している部位と角質化していない部位が存在する。一般に、咀嚼による機械的刺激にさらされやすい部位は角質化している。
舌下粘膜や頬粘膜は角質化していないので、薬物の透過性が高い。

 

 

◆ 5について
5 ○ 直腸下部からの薬物吸収は、門脈や肝臓を通過せずに全身循環に移行するため、肝初回通過効果を回避できる。

 

直腸中下部から吸収される薬物は、
その多くが門脈を通らずに全身循環静脈血に入るため、
肝初回通過効果を受けにくい。

 

関連問題
・直腸上部から吸収される薬物の吸収 95回問174b

 

・薬物の経皮吸収の総合問題 98回問167

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
105回問169(e-RECさん)

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