薬物の経肺吸収に関する記述 104回薬剤師国家試験問163

104回薬剤師国家試験 問163
薬物の経肺吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 ヒトの肺上皮表面積は小腸上皮表面積の約10倍に及ぶため、薬物の吸収部位として適している。
2 肺胞腔内にペプチダーゼが高発現するため、ペプチドの吸収部位として期待できない。
3 肺胞における脂溶性薬物の吸収は、主に単純拡散に従う。
4 肺胞腔と毛細血管を隔てる上皮細胞層は、小腸上皮細胞層と比較し、水溶性薬物及び高分子化合物の透過性が高い。
5 吸入剤の粒子径により到達部位が異なるため、肺胞内に沈着させるためには粒子径を0.5nm以下に抑える必要がある。

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104回薬剤師国家試験 問163 解答解説

 

◆ 1について
1 × ヒトの肺上皮表面積は小腸上皮表面積の約10倍に及ぶため、薬物の吸収部位として適している。

 

ヒトの肺上皮表面積は約200m2であり、小腸上皮表面積に匹敵するため、
薬物の吸収部位として適している。

 

 

◆ 2について
2 × 肺胞腔内にペプチダーゼが高発現するため、ペプチドの吸収部位として期待できない。
→ 〇 肺胞腔内はペプチダーゼが少ないので、ペプチドの吸収部位として期待できる。

 

 

◆ 3について
3 ○ 肺胞における脂溶性薬物の吸収は、主に単純拡散に従う。

 

◆ 4について
4 ○ 肺胞腔と毛細血管を隔てる上皮細胞層は、小腸上皮細胞層と比較し、水溶性薬物及び高分子化合物の透過性が高い。

 

肺胞腔と毛細血管の間には、一部を除き、
扁平な一層のT型肺胞上皮細胞が存在しているだけであり、
上皮細胞の厚さは1μm以下である。
小腸上皮細胞の厚さは40μmであるので、
肺胞上皮細胞はきわめて薄く、水溶性薬物及び高分子化合物の透過性が高い。

 

 

◆ 5について
5 × 吸入剤の粒子径により到達部位が異なるため、肺胞内に沈着させるためには粒子径を0.5nm以下に抑える必要がある。

 

薬物の粒子径が10μm以上だと、上気道で捕捉されやすく、下気道には到達しにくい。
薬物の粒子径が0.5〜1μmだと、気道の一番奥の肺胞に到達し、沈着する。
薬物の粒子径が0.5μm以下だと、吸入して肺深部に到達しても、沈着せずに呼気中に排出されてしまう。

 

そのため、吸入剤では、薬物粒子が効率よく目的部位の気管支または肺に到着し、かつ、沈着できるよう、空気力学径が0.5〜7μmになるよう設計されている。

 

 

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