薬物吸収に関する記述 93回薬剤師国家試験問152
93回薬剤師国家試験 問152
薬物吸収に関する記述の正誤について、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
a クロラムフェニコールパルミチン酸エステル結晶の懸濁液を経口投与すると、安定形の結晶は準安定形の結晶よりも高い血中濃度を示す。
b 血中濃度を長時間維持する目的で、ニトログリセリンの徐放性経口製剤が使用されている。
c ワルファリンカリウム経口投与後の血中濃度はコレスチラミン併用により低くなる。
d 皮膚をフィルムで密封すると角質層が水和し、薬物の皮膚透過性が高まる。
e 吸入剤として投与された微粒子の粒子径が小さいほど、薬物は肺深部に沈着し、肺からの吸収は増大する。
93回薬剤師国家試験 問152 解答解説
◆ aについて
a × クロラムフェニコールパルミチン酸エステル結晶の懸濁液を経口投与すると、安定形の結晶は準安定形の結晶よりも高い血中濃度を示す。
一般に、安定形の結晶は、準安定形の結晶に比べて、溶解度および溶解速度が小さい。
よって、クロラムフェニコールパルミチン酸エステル結晶の懸濁液を経口投与すると、安定形の結晶は準安定形の結晶よりも低い血中濃度を示すと考えられる。
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◆ bについて
b × 血中濃度を長時間維持する目的で、ニトログリセリンの徐放性経口製剤が使用されている。
ニトログリセリンは、肝初回通過効果を受けやすいため、経口製剤として使用されていない。
血中濃度を長時間維持する目的で、ニトログリセリンの経皮吸収製剤が使用されている。
◆ cについて
c ○ ワルファリンカリウム経口投与後の血中濃度はコレスチラミン併用により低くなる。
ワルファリンカリウムとコレスチラミンを併用すると、ワルファリンのアニオンとコレスチラミンのカチオンが、−と+の電荷間で働くクーロン力による静電的相互作用(イオン結合)でくっついてしまい、ワルファリンがコレスチラミンと共に糞便中に排泄されやすくなり、ワルファリンの吸収が低下すると考えられる。
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◆ dについて
d ○ 皮膚をフィルムで密封すると角質層が水和し、薬物の皮膚透過性が高まる。
皮膚をフィルムで密封すると、皮膚からの水分の蒸散が抑えられ、角質層が水和し、薬物の皮膚透過性は高まる。
この原理を利用し、皮膚に薬剤を塗布した後、ラップなどで覆って密封することで、薬物の経皮吸収を増加させる方法を密封療法(occlusive dressing therapy:ODT)と呼ぶ。
一方、皮膚の水分量が少なくなると、薬物の皮膚透過性は低くなる。
◆ eについて
e × 吸入剤として投与された微粒子の粒子径が小さいほど、薬物は肺深部に沈着し、肺からの吸収は増大する。
吸入剤として投与される薬物の粒子径が小さいほど、気道の深部まで到達しやすくなる。
薬物の粒子径が0.5〜1μmだと、気道の一番奥の肺胞に到達し、沈着する。
薬物の粒子径が0.5μm以下だと、吸入して肺深部に到達しても、
沈着せずに呼気中に排出されてしまう。
そのため、吸入剤では、薬物粒子が効率よく目的部位の気管支または肺に到達し、かつ、沈着できるよう、空気力学径が0.5〜7μmになるよう設計されている。