ワルファリンはコレスチミドと併用すると吸収が阻害される物理化学的要因 97回薬剤師国家試験問197
97回薬剤師国家試験 問197
下記Aはワルファリンカリウム、Bはの構造式である。
ワルファリンはコレスチミドと併用すると吸収が阻害されることがある。その主な物理化学的要因はどれか。1つ選びなさい。
1 共有結合 2 水素結合 3 配位結合
4 疎水性相互作用 5 イオン結合
97回薬剤師国家試験 問197 解答解説
正解は5のイオン結合である。
ワルファリンカリウムは、構造中の−OKからK+が解離して−O−のアニオン(陰イオン)となる。
コレスチミドはカチオン性(陽イオン)構造を持つ陰イオン交換樹脂製剤である。
よって、ワルファリンカリウムとコレスチミドを併用すると、ワルファリンのアニオンとコレスチミドのカチオンが、−と+の電荷間で働くクーロン力による静電的相互作用(イオン結合)でくっついてしまい、ワルファリンがコレスチミドと共に便中に排泄されやすくなり、ワルファリンの吸収が低下すると考えられる。
下記は関連するコレスチミドの添付文書上の記載である。
併用注意
◆ 酸性薬物(フェニルブタゾン,ワルファリン,クロロチアジド等),テトラサイクリン,フェノバルビタール,甲状腺及びチロキシン製剤,ジギタリス)
臨床症状・措置方法
併用薬の作用減弱を起こすおそれがある.本剤投与前1時間若しくは投与後4〜6時間以上,又は可能な限り間隔を空けて投与し,併用薬の作用の変化についても慎重に観察すること.
機序・危険因子
同時に経口投与された場合に,併用薬の吸収を遅延あるいは減少させるおそれがある.
関連問題
フルバスタチンとコレスチミドの相互作用と服薬指導 99回問206
◆ ワルファリンカリウムの作用機序
ワルファリンカリウム(ワーファリン)は、ビタミンKのエポキシド型からハイドロキノン型(還元型)への変換を触媒する酵素を阻害するが、これによりビタミンK依存性カルボキシラーゼの働きが阻害され、これにより血液凝固因子前駆体タンパクのグルタミン酸残基のγカルボキシ化が阻害され、正常な血液凝固因子の生成が阻害され、結果、抗凝固作用を示す。
参考文献(上記の図)
エーザイ株式会社様 Warfarin適正使用情報第3版より
◆ コレスチミド(コレバイン)の薬効薬理
コレスチミド(コレバイン)は、陰イオン交換樹脂である。
下記はコレスチミド(コレバイン)の添付文書中の作用機序の記載である。
「コレスチミドは消化管で胆汁酸を吸着し,その排泄促進作用により胆汁酸の腸肝循環を阻害し,肝におけるコレステロールから胆汁酸への異化を亢進する.その結果,肝のコレステロールプールが減少するため,この代償作用として,肝LDL受容体の増加による血中LDLの取込み亢進が生じ,血清総コレステロールが減少する.なお,外因性コレステロールの直接の吸着あるいは胆汁酸ミセル形成阻害によるコレステロール吸収阻害も血清総コレステロールの減少に寄与するものと考えられている.」
★ 他サイトさんの解説
97回問196,197(e-RECさん)