分子間相互作用と、それが支配的に働く現象の組合せ 103回薬剤師国家試験問91

第103回薬剤師国家試験 問91
分子間相互作用と、それが支配的に働く現象の組合せとして正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

1 静電的相互作用: 水中で非イオン性界面活性剤はミセルを形成する。
2 イオン−双極子相互作用: 水中でイオンは水和イオンとして存在する。
3 分散力: n-ヘキサンの沸点はメタンの沸点よりも高い。
4 水素結合: 塩化ナトリウムの飽和水溶液から塩化ナトリウム結晶が形成される。
5 疎水性相互作用: DNA 中のアデニン−チミン間に塩基対が形成される。

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第103回薬剤師国家試験 問91 解答解説

 

◆ 1について
1 × 静電的相互作用: 水中で非イオン性界面活性剤はミセルを形成する。

 

水中において界面活性剤分子同士は、
外側に親水性基を向け、
内側に疎水性基を向け合う形で会合し、ミセルを形成している。
水中でのミセル形成は、疎水性基表面から水分子を排除するために、
疎水性基同士が会合するという疎水性相互作用が要因である。

 

疎水性相互作用については下記のリンク先を参照
疎水性相互作用の原動力は水構造の崩壊とエントロピーの増大 89回問17a

 

★参考外部サイトリンク
界面活性剤や医薬品の水和(Pirikaさん)

 

 

◆ 2について
2 ○ イオン−双極子相互作用: 水中でイオンは水和イオンとして存在する。

 

・陽イオンの水和
陽イオンに対してH2Oが負に分極したOを向けることでイオン−双極子相互作用が働き、陽イオンが水和する。
分子間相互作用と、それが支配的に働く現象の組合せ 103回薬剤師国家試験問91

 

・陰イオンの水和
陰イオンに対してH2Oが正に分極したHを向けることでイオン−双極子相互作用が働き、陰イオンが水和する。
分子間相互作用と、それが支配的に働く現象の組合せ 103回薬剤師国家試験問91

 

 

◆ 3について
3 ○ 分散力: n-ヘキサンの沸点はメタンの沸点よりも高い。

 

分散力とは、分子内電子雲の瞬間的なゆらぎが基で生じる、瞬間双極子−誘起双極子相互作用による引力であり、
アルカンのような無極性分子同士の間でも働く。
分子間相互作用による引力が強いほど、沸点や融点が高くなる。
分子間相互作用は、分子間で接触する表面積が大きいほど大きくなる。
アルカンの炭素数が大きいほど、分子間で接触する表面積は大きくなり、分散力は強くなるので、沸点や融点が高くなる。
したがって、n-ヘキサンの沸点はメタンの沸点よりも高い。

 

関連問題
・分散力とは 105回問98の1

 

・直鎖アルカンと枝分かれアルカンの沸点 92回問16b

 

 

◆ 4について
4 × 水素結合: 塩化ナトリウムの飽和水溶液から塩化ナトリウム結晶が形成される。

 

塩化ナトリウムの飽和水溶液から塩化ナトリウム結晶が形成される現象は、
NaとClがクーロン力で引き合う静電的相互作用(イオン結合)によるものである。

 

 

◆ 5について
5 × 疎水性相互作用: DNA中のアデニン−チミン間に塩基対が形成される。

 

DNA中のアデニン−チミン間、グアニン−シトシン間に塩基対が形成されるのは水素結合によるものである。
DNAにおいて、アデニン−チミン間には2つの水素結合が、グアニン−シトシン間には3つの水素結合が形成される。

 

DNAの二重らせん構造の安定化には、核酸塩基対間の水素結合の形成と、
核酸塩基間のπ−π相互作用,および,疎水性相互作用によるスタッキング(積み重ね)構造の形成が寄与する。

 

★参考外部サイトリンク
塩基対と水素結合(NS遺伝子研究室)

 

 

★参考外部サイトリンク
分子間相互作用(yakugaku labさん)

 

 

★ 他サイトさんの解説へのリンク
第103回問91(e-RECさん)

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