分子間相互作用の名称と特徴の組合せとして正しいのはどれか 105回薬剤師国家試験問98
105回薬剤師国家試験 問98
分子間相互作用の名称と特徴の組合せとして正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 分散力:無極性分子同士を含め、全ての物質の間にはたらく相互作用で、物質の分極率が大きいほど強くなる。
2 水素結合:電気陰性度の大きな原子に結合した水素原子と、別の電気陰性度の大きな原子間で形成される相互作用で、共有結合と同程度の相互作用エネルギーを示す。
3 疎水性相互作用:水中における疎水性分子同士の発熱的な相互作用で、相互作用エネルギーは分子間距離の6乗に反比例する。
4 静電的相互作用:イオン間の相互作用で、その相互作用エネルギーはイオン間距離の2乗に反比例し、媒体の誘電率に比例する。
5 電荷移動相互作用:電子供与体と電子受容体の間の相互作用であり、ヨウ素(I2)−デンプン反応で青紫色に着色する要因となる。
105回薬剤師国家試験 問98 解答解説
◆ 1について
1 〇 分散力:無極性分子同士を含め、全ての物質の間にはたらく相互作用で、物質の分極率が大きいほど強くなる。
詳細は下記のリンク先を参照
分散力とは 105回問98の1
◆ 2について
2 × 水素結合:電気陰性度の大きな原子に結合した水素原子と、別の電気陰性度の大きな原子間で形成される相互作用で、共有結合と同程度の相互作用エネルギーを示す。
水素結合は、O−H…OやN−H…N などのように(…が水素結合を表す)、
酸素,窒素,硫黄,ハロゲンなどの電気陰性度の大きな原子に結合した水素原子と、
別の電気陰性度の大きな原子間で形成される相互作用である。
水素結合は、共有結合やイオン結合より弱いと考えられている。
水素結合の強さは、共有結合の1/10〜1/100程度と考えられている。
◆ 3について
3 × 疎水性相互作用:水中における疎水性分子同士の発熱的な相互作用で、相互作用エネルギーは分子間距離の6乗に反比例する。
疎水性相互作用は、疎水性分子表面からの水和水排除効果(エントロピー増大効果)が駆動力であるが、これは吸熱的な相互作用だと考えられている。
分子間相互作用に伴う発熱・吸熱については下記のリンク先を参照
東京大学大学院 津本研究室さんの記事
さらに、「疎水性相互作用の相互作用エネルギーが分子間距離の6乗に反比例する」という部分も誤りである。
疎水性相互作用は、疎水性分子表面の水分子の三次元構造の形成と破壊の結果、
疎水性分子同士が会合する現象であり、疎水性分子間に働く引力ではない。
なお、相互作用エネルギーが分子間距離の6乗に反比例する分子間相互作用として、
ファンデルワールス相互作用の引力が挙げられる。
関連問題
疎水性相互作用はファンデルワールス相互作用により説明されない 100回問91の5
◆ 4について
4 × 静電的相互作用:イオン間の相互作用で、その相互作用エネルギーはイオン間距離の2乗に反比例し、媒体の誘電率に比例する。
→ 〇 静電的相互作用:イオン間の相互作用で、その相互作用エネルギーはイオン間距離と媒体の誘電率に反比例する。
詳細は下記のリンク先を参照
静電的相互作用とイオン間距離・媒体の誘電率の関係 105回問98の4
◆ 5について
5 〇 電荷移動相互作用:電子供与体と電子受容体の間の相互作用であり、ヨウ素(I2)−デンプン反応で青紫色に着色する要因となる。
水中でヨウ素とデンプンを反応させると、水中でらせん構造をとるデンプンの中にヨウ素が入り込み、ヨウ素とデンプンの包接化合物を形成する。この包接化合物は電荷移動錯体であり、デンプンが−OH基の非共有電子対を供与することで電子供与体となり、ヨウ素が電子受容体となっている。ヨウ素デンプン反応では、この電荷移動錯体の生成により、新たな光の吸収帯が発現することで、青紫色を呈色する。
★ 他サイトさんの解説へのリンク
105回問98(e-RECさん)