96回薬剤師国家試験問16 フッ化水素と水に関する記述の正誤
第96回薬剤師国家試験 問16
次のフッ化水素と水に関する記述の正誤を判定してみよう。
a フッ素原子の電気陰性度は、酸素原子の電気陰性度より大きい。
b F−H…F の水素結合は、O−H…O の水素結合より強い。
c 液体のフッ化水素で形成される1分子当たりの水素結合の数は、水で形成される1分子当たりの水素結合の数より多い。
d フッ化水素の沸点は、水の沸点より高い。
第96回薬剤師国家試験 問16 解答解説
◆ aについて
a 〇 フッ素原子の電気陰性度は、酸素原子の電気陰性度より大きい。
電気陰性度は周期表で右または上にある原子ほど値が大きい。
原子の電気陰性度は分子の極性を考える上で重要である。
下記に示す原子の電気陰性度の大まかな値を覚え、炭素との差が計算できるようになると、分子における分極の度合がイメージできるようになり、化学反応が理解しやすくなる。
F(4.0)>O(3.5)>Cl(3.2)>N(3.0)>Br(3.0)>I(2.7)>S(2.6)>C(2.5)>H(2.2)
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電気陰性度とは(理系ラボさん)
◆ bについて
b 〇 F−H…F の水素結合は、O−H…O の水素結合より強い。
電気陰性度はF原子の方が酸素原子よりも大きいため、F−HのHの方がO−HのHよりも共有電子対を相手方に強く引っ張られており正に分極する度合いが大きいため、F−H…F のH…Fの方が、O−H…O のH…Oよりも強い。
◆ cについて
c × 液体のフッ化水素で形成される1分子当たりの水素結合の数は、水で形成される1分子当たりの水素結合の数より多い。
HFはHF分子同士で1分子当たり2つの水素結合を形成するのに対し、H2OはH2O分子同士で1分子当たり4つの水素結合を形成するので、同じ分子同士で1分子当たりに形成する水素結合はH2Oの方が多い。
◆ dについて
d × フッ化水素の沸点は、水の沸点より高い。
1気圧におけるおおよその沸点は、HFが20℃であるのに対してH2Oは100℃である。
電気陰性度はF原子の方がO原子よりも大きいため、個別の水素結合の強さではF−H…F の水素結合の方が、O−H…O の水素結合より強い。
しかし、HFはHF分子同士で1分子当たり2つの水素結合を形成するのに対し、H2OはH2O分子同士で1分子当たり4つの水素結合を形成するので、融点・沸点はHFよりもH2Oの方が高い。
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水素結合(理系ラボさん)